ソフォスは製品ありきのビジネスからの転換を図る。同社のグローバルの従業員、パートナー、SIer、エンドユーザーも含めた大きなエコシステム(生態系)を構築し、パートナーとの連携をさらに強化することによって、顧客が抱える潜在的な課題を解決するためのソリューション提供を目指す。3年後には日本法人での売上高を4倍に、グローバル全体での日本の占める比率を20%にまで伸ばす方針だ。
鍋島蓉子●取材/文 馬場磨貴●写真
グローバル、4000人の成長戦略
──アップルコンピュータ(現アップルジャパン)、アドビシステムズ、ノベルなど、数々のIT企業の社長を歴任されていますが、今年ソフォスの社長に就任されました。
堀 CEOのスティーブ・マンフォードと、ワールドワイドのセールスとオペレーションの責任者のマイケル・マクギネス、チェアマンのピーター・ギネスといった本社幹部の3人の存在が、就任のきっかけです。
ピーターは私がインフォミックス(現IBM)の社長時代、本社のCEOでした。フレンドリーで一緒に仕事しやすい人です。スティーブも日系企業で仕事をしていたことがあり、日本のことがよく分かっている。マイケルについては、彼が来日した際にスケジュールを詰め込みすぎてしまい、叱られるかなと思っていたけれど「OK.Just feed me food and coffee.(食べ物とコーヒーさえ与えてくれれば平気さ)」と、ニコニコマーク付きのユーモアあるメールを送ってくれました。
結局のところ、仕事は「ヒトとヒト」なので、いかに状況を理解し信頼してサポートを行ってくれるかとか、こちらも言いたいことが言えるかとかが大事です。その点では、深刻な話も楽しく乗り越えてしまえる、そういう人たちが上にいます。
──昨年、暗号化・情報漏えい対策ソフトのウティマコセーフウェアを買収しましたね。製品戦略はどう変わりますか。
堀 ウティマコを買収することにより、これまでは外部の脅威を防ぐのが主でしたが、内部の情報漏えいに対するセキュリティを強化しました。これから製品の統合が進んでいく予定で、今春にはソフォスの製品でウティマコの技術を反映した中小企業向けの製品をリリースする予定です。
──まだ就任されて1か月程度しか経っていませんが、現状の課題は。
堀 日本法人の売上高のうち、官公庁が4割を占めるという点は、特徴がよく出ていると思います。外資系企業が官公庁と取引するのは本当に大変で、私が前にいた会社はどこも苦戦していましたから。また、納入先の15%くらいは大学関係となっています。先日、早稲田大学で「7万ユーザーに導入」と発表しましたが、これは当社にとって非常に意義のあることです。学生たちが社会に出た時に当社製品を覚えていて、また使ってくれる可能性が高くなります。一方、企業向けは45%程度で、この領域は競合他社と比べて強化すべきところです。
──官公庁に食い込んでおられるので、企業向けが45%でも遜色ないように思えますが…。
堀 う~ん、企業向けで8割ほどを占めているのが一般的だと見ています。実は3年間で日本法人の売上高を4倍、グローバル売上全体での比率を20%にしたいと計画しているのです。当社はワールドワイドで1500名以上の従業員を抱えています。そのほか、国内にはパートナー30社の中の300人がソフォスに関わっています。今後はパートナーを拡充するのではなく、既存のパートナーの中でソフォスの仕事に携わる人材をもっと増やしてもらい、まとまった部隊を作ってもらう。3年後にはパートナー全体で2000人がソフォスのビジネスに関わっていてもらいたいと考えており、パートナープログラムを発足します。その頃には、当社の従業員数もグローバルで2000人に増えているかもしれません。そうなると日本で計4000人が関わっていることになるのです。社長に就任してから1~2週間ほどの間にパートナーを回り、「売り上げを4倍にしますので、当社のビジネスに携わる方をもっと増やしてほしい」とお願いしました。国内大手のパートナーさんたちに「やりましょう」と快諾していただきました。従業員には「3年間、計画値を外し続けてしまったら、最後に本社に謝ろう」と話しているんですよ。
──計画値を下回ってしまったら、謝るということですか。
堀 いいえ、その逆。「ごめん、4倍じゃなかった、10倍に伸びてしまった」って謝ります。パートナーも「売上高を2割増しにしましょう」というと、現実的に頭で考えてしまうのですが「4倍にしましょう」と夢を語ると、とりあえず頭ではなく身体を動かそうという気になります。「Yes We Can」、できると思ったらできる。実はアップルコンピュータ時代にも、当時のCEOであったジョン・スカリーと日本法人で大幅に売り上げを伸ばすと約束して、達成しました。あるとき警察から電話がかかってきて、何かと思ったら、製品を搬出するトラックが列を成して道路が渋滞して困る、という連絡だった(笑)。
3年間で売上高を4倍にしようと計画しています。本社に謝ろうと話しているんですよ。「ごめん、4倍じゃなくて10倍に伸びてしまった」って。
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