「日の丸ソフトを世界へ!」。国産ソフトメーカー13社が掛け声をあげて立ち上がったMIJSコンソーシアムも発足から2年半が経ち、会員企業は27社にまで増えた。設立趣旨がユニークだったことから注目度は高かったが、海外展開が加速したとは言い難い。しかし、「今年は海外で売るための仕組みに本格的に動く」と千田峰雄理事長。このままで終わらせるつもりはなさそうだ。
木村剛士●取材/文 馬場磨貴●写真
インフラ整備と認知度向上
──「MIJS」は「Made In Japan Software」の略。「世界で国産ソフトを売る。そのための仕組みを共同で立案・推進する」というのが、MIJSコンソーシアム設立の主旨ですね。ただ、その活動があまり活発でない印象があります。理事長としてMIJSの世界展開をどうみていますか。
千田 確かに弱い。「世界へ!」と言いながら、ちっとも飛び出していないと私も思っています。志は高いのですが、具体的な道筋をどうするかという部分で議論が止まってしまっている。ただ、このままでは終わらせません。私が会長を務める東洋ビジネスエンジニアリングはMIJS設立メンバー企業で、私は2008年4月からMIJSの理事長として指揮しています。今、09年度の活動方針を策定している最中で、その重点項目に海外展開を位置づけるつもりです。
──具体的にはどんな策を講じますか。日本のソフトメーカーで海外に挑戦する企業は存在します。MIJSは中国上海市に事務所を設けて普及活動を進めています。ですが、大きな成功を収めたとは言い難い。障壁は高い……。
千田 世界市場ですでに活躍している海外メーカーと真っ向勝負では、当然難しい。まずは海外でビジネスするのに最適なインフラが必要だと感じています。そこで期待しているのがSaaS。インターネット越しにアプリケーションを提供できるSaaSは、物理的な距離の障壁を取り払い、国境を飛び越えられます。どう売るかは別として、多言語化すれば海外諸国のユーザー企業に、ライセンス販売よりも容易に海外ビジネスを展開できるようにはなるでしょう。
SaaSには2年ぐらい前から可能性を感じて、MIJSの理事時代に「SaaSを研究しよう」と呼び掛けていました。多少、尖がったことも言ったと思います。そうした思い入れがあったので、理事長になった昨年の活動は、SaaS一点張り。他の活動テーマもあるのに、かなりSaaSに力を注ぎましたよ。その成果として、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)と組んで、SaaSに関する共同実証実験をスタートすることができました。MIJSとしてのSaaSへの取り組みは、着実に進んでいます。
──インフラ整備だけで十分ですか。
千田 であれば、誰も苦労しない。SaaSとして世界に提供できるインフラを整備する一方で、それを認知させて仕事にする仕組みをつくらなければ成功はない。
私見になりますが、そのためには海外市場に強いSIerやコンサルティング会社など、ITをユーザー企業に直に提案するITベンダーに、MIJSや参加企業のソフトを評価されないとダメだと思うんですよ。海外製品と同じ土俵の上で見比べてもらうことがまずは必要ではないでしょうか。
一例として、メンバー企業とSIerが海外で売るための策を一緒に議論できるワークショップを設けるとかね。海外に打って出るためには何が欠けているのか、どんな手を講じるべきかを忌憚なく議論する場が大前提として大切だと感じています。基本的なことかもしれませんが、現状の進捗を考えると、まずこうした取り組みで海外を意識するクセをつけなければなりません。
──そうなると、会員企業にSIerやコンサルファームを巻き込む、と。
千田 いや、別に会員企業でなくてもいいと思いますよ。会員枠とは別に、「海外展開協賛グループ」のようなコミュニティを設けてもいいと思います。大事なのは、単なる意見交換だけではなくて、具体的な施策と計画を立ててプロジェクトを立ち上げ、成果物を出すことです。
──業界団体が持つ共通課題かもしれませんが、「最盛期は設立時。その後は尻すぼみ」が多い。志だけで会員が動くのは理想ですが、具体的なメリットを提供しないと、企業個々の思惑もあるだけに活性化するのは難しいはず。MIJSは設立から2年半が経って、その問題を突きつけられているように思います。
千田 う~ん……。それは分かっています。先ほど話したNTTコムとの実証実験も、やるとなったら参加企業は大変ですよ。ある程度の自己犠牲が必要というか。いろいろな施策で手弁当になることがあると思いますが、有志が率先して手をあげる雰囲気と、努力に対する見返りをきちんと用意する仕組みを意識しなければならないと私も思っています。
海外展開施策は確かに弱かった。ただ、今年は違う。海外市場に強いITベンダーに日本のソフトを評価してもらえる仕組みをつくる。
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