今年4月1日、新体制でスタートを切ったエス・アンド・アイ(S&I)。トップには、日本IBMでサーバーやパートナー関連などの事業を手がけた藤本司郎氏が就任した。“新生S&I”が成長する決め手として、藤本社長は「“とんがった技術力”に磨きをかける」ことを挙げる。はたしてS&Iは、その技術力でどのポジションを担うのだろうか。
佐相彰彦●取材/文 ミワタダシ●写真
体制整備で2ケタ成長へ
──今年4月1日付で社長に就任されました。S&Iに、どのような印象を受けましたか。
藤本 “とんがった”社員が多いな、という印象です。私は日本IBM時代、メーカーの立場から、販売代理店である当社と長くつき合ってきましたが、その時は「技術者集団」という印象を持っていました。社長として当社に入ってからも、外で抱いていた印象は変わっていません。むしろ“とんがった技術力”という印象がプラスされたことで、思っていた以上に大きな可能性を秘めていると実感しています。
──“とんがった”というのは、どのような点なのでしょう。
藤本 個々の技術者が、それぞれの分野でエキスパートになっている点です。他社に先行できる技術力がある。しかも、きちんと成果を上げている。例を挙げれば、厳しいといわれている国内サーバー市場のなかで、当社は昨年度、前年度比2ケタ成長をすることができました。とくに、ブレードサーバーが伸びたんです。これは、当社が最も得意としている「仮想化」を武器にした成果です。
日本ユニシスグループのなかでも当社が“とんがって”いるのは、IBM製品を中心としたビジネスに固執している点でしょうか。親会社であるユニアデックスは、サーバービジネスに関してマルチベンダー化を目指していた。足りなかったのはIBM製品です。それが、昨年5月に当社がユニアデックスの子会社になったことで、日本IBMとも協業するという“テコ入れ”が実現したわけです。
──課題はありますか。
藤本 もちろんです。社長に就任して真っ先に社員と話す機会を作ったのですが、その対話から当社の良い点、悪い点、合わせて300程度のポイントが浮かび上がりました。とくに改善が急務だと思ったのは、コミュニケーション。経営陣が現場を把握した戦略を立てていない。そのため、現場に経営陣のビジョンが届いていない、ということでした。
──日本ユニシスグループになって、企業風土が少し変わったということでしょうか。社員のモチベーションに変化が現れている。そのため、逆にS&Iらしさが薄れてきている可能性があるのでは──。
藤本 現場の技術力に変わりはありません。経営陣が「有言実行を貫かなかった」から、うまくコミュニケーションがとれなかった。この反省を踏まえ、これからは社員から課題として挙がってきたことを経営に生かしていきます。つまり、全員参加型の経営を積極的に進めていくのです。
また、私が当社に来る前の3か月程度、ユニアデックスに籍を置いていた効果もあります。いい意味で、親会社を活用できる。日本IBMにいたノウハウも生かすことができる。日本IBMとユニアデックス、そして当社のいい部分を組み合わせ、社員が働きやすい環境を作っていきます。“新生S&I”をスローガンに掲げ、有言実行で臨みます。
──組織・体制での変更点はありますか。
藤本 基本的にトップダウンで押し付けることはしたくないので、当面は大幅な組織変更を行う予定はありません。課題の解決が先です。
ただ、若干の変更は行いました。それは、「サーバー」「ストレージ」「ネットワークテレフォニー」「マネージドサービス」など、本来、当社が注力すべき製品・サービス分野を強くしていくための施策です。先ほど申し上げた通り、当社は技術者が各分野でエキスパートになっています。半面、自分の分野にこだわって、周りが見えなくなってしまうケースがある。これを解消するため、具体的な組織ではないのですが、それぞれの分野に連携を模索する担当責任者を置きました。これによって、さらに“とんがった技術力”でビジネスを展開していきます。各分野とも、ビジネスのベースはしっかりしている。この基礎を応用していく体制を整えたわけです。
──今年度(10年3月期)の業績目標は。
藤本 前年度比でいえば2ケタギリギリのところ、最低でも07年度並の業績まで戻すことを目標にしています。
さまざまな分野を網羅する“とんがった技術力”を持つのが強み。各分野のビジネス連携が効果を発揮すると確信している
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