携帯電話など通信関連機器の販売会社であるフォーバルがビジネススタイルの抜本的な変革で業績伸長を果たした。3年前から取り組み、2008年度(09年3月期)に実を結んだ形だ。同社は、創業から25年が経過したことで今の段階を“第2コーナー”と位置づけている。サービス型モデルの積極的な展開などで利益体質の改善を進める同社の方向性について、大久保秀夫会長兼社長に聞いた。
佐相彰彦●取材/文 ミワタダシ●写真
コンサルで黒字転換を果たす
──昨年度の業績は、どのような状況でしたか。
大久保 一昨年度まで赤字が続いていましたが、昨年度で黒字に転換しました。今年度も大幅な伸びが期待できる見通しです。 世間では、昨年10月以降の急激な冷え込みで業績が芳しくない。また、通信業界は3年ほど前から低迷している。そんななかで、業績回復を果たしたことは非常に大きな意味があると思っています。
──回復した要因は?
大久保 今までと異なっている点は、製品重視の考えをサービス重視に切り替えたことです。具体的にいえば、コンサルティングサービスに力をいれています。3年前から基盤を固め、昨年度には安定収益が見込めるようになりました。コンサルティングをベースにハードウェアやソフトウェアを組み合わせて提供する。このようなビジネスモデルを確立させたのです。
──どのようなコンサルティングサービスを提供しているのですか。
大久保 基本的には、顧客企業のトップが求める経営とは何かを聞き出し、それに見合ったIT/通信の製品・サービスを提供していくことです。顧客企業と接点のある営業担当者だけでなく、技術担当者やサポート担当者を含めた三位一体で経営改善になるシステムを考える。こうしたビジネススタイルによって、顧客企業との関係が深くなっています。
──コンサルティングサービス以外でも、顧客企業との関係を深耕させるための策は講じましたか。
大久保 顧客企業に対する接し方を大きく変えました。この変更は、顧客企業との継続的な取引に寄与しています。製品を売ることが中心だった頃は、正直いって“いけいけ・どんどん”で「売ったら終わり」の考え方だった。しかし、今はコンサルティングサービスを取り入れたことで頻繁に顧客企業に通っています。顧客企業の経営改善を最大限に考えているからこそ、「パートナー」と認めてもらい、がっちり組めるようになった。
──がっちり組んだからこそ製品も導入してくれる、と。
大久保 そうなんです。また、製品価格を下げないで提供できるようにもなったんです。業績でいえば、数値の質が変わったということです。当社側からは顧客企業に適した製品を提案する。顧客企業は、当社を信頼してくれているからこそ正規の値段で買ってくれるのです。
──コンサルティングサービスをメニュー化するのですか。
大久保 それはもう実施しています。今年度からコンサルティングの専門チームを設置しました。7月には組織化する予定です。この組織で順次メニュー化していくことになります。
もともと当社は販売力を強みとし、中小企業を対象に通信機器やIT製品を売ってきました。顧客企業を一軒一軒回って契約に結びつけた。まさに「どぶ板」を踏んで営業してきたのです。これによって1万社の顧客を獲得したのです。中小企業の現場を知っているからこそ、求めているコンサルティングができる。それに、当社の営業ノウハウもメニュー化して提供できます。こんなふうに、さまざまなサービスメニューがイメージできるのです。
一つは、今でも行っているのですが、「よろず相談」的なサービスの提供です。顧客企業が悩んでいることを、当社の全国にわたる支社や支店から情報を集めて顧客企業のニーズに応えています。
コンサルティングを事業の柱に据えたことによって、顧客企業側は経営改善に向けたIT/通信関連製品の導入やサポートを受けられるようになる。「安心・安全」をテーマに掲げ、既存顧客の満足度向上や新規顧客の開拓を図っていきます。
──今の状況を表現するならば……。
大久保 四半世紀を節目とすると、創業から28年目の現在は“第2コーナー”です。“第2コーナー”の始まりである3年前にビジネスモデルの変革に踏み切り、今まさに実を結んだという状況です。
四半世紀を節目とすると、今は“第2コーナー”。その始まりである3年前にビジネスモデルの変革に踏み切り、今まさに実を結んだという状況です。
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