ストレージ関連製品メーカーのネットアップは、自社製品の提供に適したビジネスモデルを構築しようとしている。大企業向けにITインフラを提供する一方で、SaaSやPaaSなどサービス型モデルを提供するベンダーとアライアンスを組むことでSMB(中堅・中小企業)を開拓していく。今年1月1日に新社長としてタイ・マッコーニー氏を迎えたネットアップ。「クラウド時代を見据え、確固たるポジションを築く」と話す新社長に今後の方向性を聞いた。
佐相彰彦●取材/文 ミワタダシ●写真
有力SIerとパートナーシップ
──社長就任から6か月が経過しましたが、描いたイメージ通りに進んでいますか。
マッコーニー まだまだ課題はありますが、間違いなく正しい方向に進んでいます。顧客企業に適したITインフラを提供できる素地が固まった。それに加えて、日本市場の主軸となる販売パートナー経由でのビジネスが一段と明確になった。体制が整ったと実感しています。
──「課題がある」とのことですが、それは何ですか。
マッコーニー 体制が整ったといっても、(社長就任から)まだそれほど経っていないこともあって、現段階では実ビジネスとして開花していないなど数え上げれば切りがないほど課題は多い。何といっても、日本市場でシェアを獲得できていないのは大きな課題です。ワールドワイドではマーケットリーダーであるにもかかわらず、日本では認められていない。日本でも、NAS(ネットワーク・アタッチド・ストレージ)でトップシェア、iSCSIで2位を確保しているのですが、ほかのストレージ分野で知名度が低い。そこで、当社のストレージをベースに統合ソリューションを提供できることを前面に打ち出してアピールしていかなければなりません。ストレージに特化していることこそが、当社の強みだと自負しているからです。
──具体的に、どのような手を打っていくのですか。
マッコーニー さまざまな場所や多くの場面で、当社のストレージ製品が使われる状況を作っていくことです。そのような時代でもある。そのため、まず今年度(2009年12月期)早々に組織体制を強化しています。
具体的には、ハイタッチ営業とチャネルビジネスをバランスよく手がけられる体制を敷きました。顧客企業の声を当社が直接聞くことと、販売パートナーとの協業強化を図ることが狙いです。
当社から顧客企業にアプローチしていくのは、決してチャネルビジネスを縮小する意味合いではありません。マーケットに対して、メーカーである当社からアプローチしていかなければ、メッセージがきちんと伝わりせん。当社がマーケットに対して何もアクションを起こさなければ、販売パートナーが売りにくい環境をつくってしまうことになりかねない。販売パートナーとともに成長していくというのが、日本市場で最も重要なことだと認識しています。
──組織整備による効果は出ていますか。
マッコーニー 販売パートナーが、当社でカバーできない領域で顧客企業のニーズを収集しています。一方、当社では販売パートナーが入り込んでいない分野で声を吸い上げており、アプリケーションベンダーとのアライアンスにも力を入れている。こうした取り組みで、当社の知名度を高めています。
──力を入れてカバーしていく領域というのは、業種や企業規模などでいうと、どのあたりですか。
マッコーニー 販売パートナーがカバーしているのは、業種でいえば製造や金融、教育、流通などです。企業の規模でいうと、大企業が中心になってきます。そのための販売網は構築できている。当社の販売パートナーになってくれているSIerは、ストレージをベースに完全なソリューションを提供する能力があります。大規模なシステムになればなるほど、力を発揮してくれています。
当社も、顧客のなかで大企業の声を収集しているのですが、販売パートナーと異なる点は、あくまでも当社はソリューションを提供しないということです。とくに、最近はアウトソーシングサービスを拡大しようとするベンダーに対してデータセンター(DC)を活用した提案を進めているのです。
SMBが「A-a-S」を導入しない理由はない。その流れに向かうと確信している。
[次のページ]