国内帳票ソフトウェア市場では、独立系ソフトベンダーとして業界トップのウイングアークテクノロジーズ。内野弘幸社長は「われわれが果たす役割はまだある」と、創業来の源流である帳票ソフトに限らず、情報システム全体の開発効率化やデータ活用に向けた製品開発を推進。行き着く先として「世界に冠たるベンダー」になることを視野に入れている。
谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文 大星直輝●写真
帳票からステージアップ
──国内帳票ソフトウェア市場では、ウイングアークテクノロジーズ製品は「デファクトスタンダード(事実上の業界標準)」になっていますが、これからどう飛躍しようと考えていますか。
内野 その質問にはどう答えたらいいか、とても難しい。ただ、本質論から話しますと、僕らがなぜこれまで(ソフトウェアベンダーを)やってきたかということになります。それは、日本の情報システムの「つくり方」「つくられ方」に問題点があると感じているからなんです。
当社が帳票作成・帳票出力ソフト「SVF(Super Visual Formade)」を1995年に出荷した当時は、開発に手間のかかる帳票ソフトを優秀なエンジニアが工数をかけて「手組み」でつくっていました。これはもったいない。情報システム導入の目的は、「使いこなして、活用すること」です。しかし、「つくること」に意識がいきすぎていた。そこで、われわれに何ができるかと考えたところ、たまたま帳票ソフトを提供する場があったということだけなんです。
──現在は、帳票ソフトに限らず派生製品をさまざま出していますね。
内野 細かい話になりますが、帳票システムは、ページコントロールだけでもプログラム・ロジックを数多く組む必要がある。手間のかかる作業を、工数をかけてやっていたんです。当社の帳票ソフトは、偶然、世に出した製品ですが、この工数削減に大きく貢献できたと思っています。
こうしたことを着実に積み上げていくにつれて、それなりに大きなシステムで使っていただけるようになった。で、結構なシステムになると、プリンタで帳票を出力するだけではすまなくなった。例えば、帳票作業に関わるどこかの工程でジャムった場合に、再印刷できるよう要求が出て、これらに対応したミドルウェアを製品化するなかで「総合的な帳票基盤」へと育ったんです。
──御社は「ミドルウェアベンダー」を標榜し続け、これまで実現してきた製品や他社とのアライアンスの積み重ねが歴史を形作っている…。
内野 そういう意味で、これまで一貫してやってきたのは、企業内の情報システムをいかに効率よく開発するか。あるいは、開発せずに部品を組み合わせるだけでシステム構築するということへのチャレンジでした。その延長線上で考えると、この世界をもっと広げられる。
──それは興味深いですね。単なる帳票ベンダーにとどまらない、と。
内野 そう。そういう視点でみると、われわれがやるべきことは、まだあるんだろうなと思っています。当社だけでなく、他ベンダーの“尖った”ところと組み合わせる場合もありますし、当社だけでやる選択肢もあるでしょう。これがわれわれのベクトルです。
──微妙な表現ですね。新たな領域に踏み込む際の“起点”はどこですか。
内野 「アウトプット・マネジメント」です。コンピュータで処理した情報を人に伝えるための“橋渡し”になるのが帳票であったり、BI(ビジネス・インテリジェンス)のようなレポーティング機能などになります。ここが“機軸”であり、“起点”です。そこからみて、当社にできる領域を広げていくということです。
──気になる話が多いですね。
内野 当社には、「インプット」「アウトプット」「蓄積・集計」に関連する三本柱の製品がある。「SVF」を源として構成してきましたが、これまで三本柱は別々に動いてきた。これをうまく融合させて総合力を発揮し、ゆくゆくは企業の情報システムを効率化するという、もう一段上のステージを目指します。
思うんですけど、企業は「情報を活用したい」から情報システムを入れるはずなんです。「情報」を流すために伝票が必要だったりしますけど、伝票を発行し売上高が計上されたりしてデータが溜まります。それを活用することに情報システムの利用価値がある。でも、いまの情報システムは「情報を活用して企業経営に生かす」というニーズに全然応えられていないんですよ。
日本の情報システムの「つくり方」「つくられ方」に問題があるからこそ、当社はソフトウェアベンダーを続けてきた。
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