H3Cテクノロジーは、中国を主力市場にし、ワールドワイドで大手メーカーに位置づけられている。だが、日本市場ではブランド力の低さから“第二集団”とみられることが多い。劣勢を挽回するために、日本法人のH3Cテクノロジージャパンでは新製品の発売を機に、トップ圏内に食い込む決意を固めた。その具体策として、販売代理店との協業関係を深めて全国網で拡販する体制を構築。今年4月に社長に就任した久保田則夫氏に戦略を聞いた。
佐相彰彦●取材/文
大星直輝●写真
ブランド力向上で競合に対抗
──これまで、複数のネットワーク機器メーカーでビジネスを手がけてこられましたが、H3Cテクノロジージャパンの印象は?
久保田 中国・杭州の本社を訪れた際の第一印象は、中国企業っぽくないということです。というのも、開発面で非常にアグレッシブな投資を進めていたからです。これまで米国企業の日本法人を渡り歩いてきましたので、H3Cは中国企業でもあるし、「少し勝手が違うかな」と考えていたのですが、今は「面白い会社だな」と実感しています。これは、米スリーコムの子会社だからということも関係しているかもしれません。
それに、非常にタイミングのいい時期に当社に入ったと思います。私は今年4月、日本法人の社長に就任するために移籍しました。移ったばかりの6月に、当社でいうところの今年度(09年12月期)の折り返し点を迎えたのですが、非常に順調です。4月からこれまで、多くのことを勉強させてもらいました。3か月以上が経過した今、当社が一段と成長するための方向性がみえてきました。
──具体的には…。
久保田 開発投資に積極的ですので、次々と新しい製品を市場投入できる。そのため、戦略が立てやすいのです。
市場環境は非常に厳しい。スイッチやルータなどネットワーク関連機器市場は成熟期に入り、ユーザー企業が投資対効果をますます気にするようになっています。これは、日本に限らずワールドワイドで起こっていることです。とくに、米国は大きなダメージを被っています。そのため、大手ネットワーク機器メーカーが業績を落とす状況になっている。
一方、H3Cはワールドワイドで堅調に推移しています。昨年度は、7億8000万米ドル(約741億円)の売上高に達しました。1ケタ増でしたが、この市場環境の下で伸びたのは大きな成果です。売上増加の要因は、中国市場で成功していることにあります。景気が悪化しているなかでも、中国市場には元気がある。その成長路線を日本市場でも反映できると考えています。
──ただ、製品ラインアップに関して、ワールドワイドと比較して日本市場への投入数は少ないですよね。
久保田 そこが課題なんです。だからまずは、スイッチで他社に負けない製品を出していく。「H3C S12500」シリーズと「H3C S5800」シリーズのスイッチを発売したのはその一例です。両製品とも、仮想化への対応など、次世代データセンターや大学などキャンパス・ネットワークが構築できる機能を搭載しています。「S12500」は、10ギガビット・イーサネットを最大512ポート実装可能で100ギガビット・イーサネットにも対応しており、大規模システムの基幹スイッチという位置づけです。「S5800」は10ギガビット・イーサネットを24ポート装備し、拡張性に優れている。大規模システムのエッジ、また中小規模システムの基幹スイッチとして活用できることが特徴です。
──新製品を発売することで、課題は払拭できますか。
久保田 大丈夫です。これまで、製品ラインアップが乏しかったことと、日本でのブランド力の低さが課題としてありました。中国生まれのリーズナブルな製品と思われているんです。機能については技術の進歩によって一般的にスイッチで求められるものは、どのメーカーでも搭載できるようになりましたので、質については言われなくなりましたが、中国企業ということで米国企業の製品と比べて下に思われているんです。ワールドワイドの大手であるシスコシステムズさんやジュニパーネットワークスさんとは競合しない、“第二集団”だと認識されているということです。このブランドイメージは、何とかしなければならない。
ワールドワイドでは、シスコさんなどと互角に戦っている。日本でも対等に渡り合っているという印象をユーザーに与えなければならない。その点では、「S12500」などの新製品でシスコと十分に対抗できる。まずは、スイッチで大手メーカーに負けない製品と次々と発売する。そしてIPやストレージなど、ワールドワイドで展開している製品を市場投入できる素地を固めていく。これが私の考えている方向性です。
世界市場では、トップメーカーと互角に戦っている。日本でも対等に渡り合えるはずだ。
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