「ものづくり革新ユニット」の支配人を務めるなど、NECでモノづくり改革を進めてきた中西清司氏が、保守サービス会社のNECフィールディングのトップに就いた。従業員の質が成長を左右するサービス企業だが、中西社長は「モノづくりもヒトづくりも同じこと」と断言する。CS(顧客満足度)向上を常に意識するNECフィールディング。企業の成長のために、中西社長はそれと同等レベルで「ES(従業員満足度)の向上が欠かせない」と考えている。
モノづくりとヒトづくりは同じ
──NECで生産革新やプロセス改善などモノづくりに携わってきたなか、一転、サービス会社のトップに就かれました。これまでとは違う点も多いのでは?
中西 NECのようにメーカーであれば、経営は「4M(Man、Machine、Material、Method)+IT」だと思います。ただ、NECフィールディングは「1M(Man)+IT」。成長のカギは「ヒト(従業員)」なんです。
NECフィールディングの社長に就いて早々、私は「現場主義をもう一度見つめ直そう」と従業員に伝えました。現場で働く人は、楽しく仕事ができているか、業務にムダはないのか。そして、誇りと自信と使命感をもつことができているのか。それをもう一度確認しよう、と。従業員が活躍できる場を提供すること、協働するチームワークをつくることが、この会社の経営者としての役目だと思っています。
──中西さんはモノづくりの現場が長く、生産革新のプロ。モノづくりとヒトづくり、どこが違うのでしょうか。
中西 どちらも同じです。プロセスをつくって改善する。そして改善できる人間をたくさんつくる。それはモノでもヒトでも変わりありません。
──御社の歴代の社長も、現場を大切にする考えをもっておられたはず…。
中西 社長に就いてすぐ、私は現場を回らせてもらいました。お客さんへの挨拶回りは新任社長として当たり前かもしれませんが、私はそれに加えて、CE(カスタマエンジニア)に同行し、お客さんを訪問して定期点検する業務を体感させてもらったんです。
現場を支えるバックアップ体制や社内のITシステムはすでに出来上がっています。CEは決められたプロセスに沿って、しっかりとスピーディに仕事をこなしていました。その実行力はすごい。情報システムの安定稼働を保障している企業らしく、決めたことを完遂するまではテコでも動かない軍隊みたいな力をもっていることを目の当たりにしました。
ただ、その一方で「こんなツールを使えば、こんなやり方をすればもっと楽で効率的に仕事ができるのに……」と、改善の余地があるとも感じたんです。今のやり方が本当に適切なのかを考え、改善する力を兼ね備えれば、もっと強い会社になります。
──従業員の力を重視するのであれば、ES(従業員満足度)は経営者の力を測る尺度になりますね。
中西 その通りです。稼ぐのは従業員だし、マジョリティ(多数派)は現場の従業員ですから。現場の心を掴まなければ企業の成長はない。自分の仕事を好きになって誇りをもち、スキルを高めてもらえるような環境をつくりたい。そうすれば使命感が生まれ、自ずとESは向上すると思います。
NECフィールディングの社長だからではなく、私はESを以前から重要視してきました。教育や表彰、資格制度をつくった時は労働組合の委員に参加してもらい、今回は前社長に無理を言って、就任後すぐに労使協議会を開いてもらいました。
──ES向上に必要な要素、従業員が求めているものは何だと思いますか?
中西 その一つとして、スキルの向上があると思います。だから、従業員が常に自己研鑚できる環境が整っている会社でありたいし、教育を最も重視している企業と呼ばれるようになりたいと思っています。
決めたことは完遂する、軍隊のような実行力のある会社。そこに改善能力が加われば、もっと強くなる。
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