ターボリナックスは2009年5月、純粋持株会社TLホールディングスを設立し、傘下事業会社の1社となった。それから1年、事業会社が増えて業容も拡大し、商用Linux市場の環境が厳しさを増すことから、自然と老舗Linuxディストリビュータの存在感は薄れていた。そんななか、2010年3月31日にトップに就いたのが森蔭政幸氏だ。グループ全体の業績は低迷中で、市場環境も厳しい。トップに就いたタイミングは決していいとはいえないが、「成長は可能」と断言する。「原点回帰」の製品づくりと、中国市場も視野に入れた営業展開で復活を誓う。
厳しい環境下でも伸ばす自信
──業績が低迷するなか、2009年5月に純粋持株会社のTLホールディングスを設立し、業容を拡大させました。事業会社が急速に増えたことで、老舗のLinuxディストリビュータであるターボリナックスは、存在感が薄れた印象があります。「OSS(オープンソースソフト)事業をやめるのではないか」という噂を耳にしたこともあります。
森蔭 実は、私も聞かれたことがありますよ(笑)。「OSS事業から撤退するんですか?」ってね。
──グループ企業のCJ-LINXが新たに中国市場への進出支援ビジネスを立ち上げ、その動きが活発だったからでしょう。そう思われるのも無理はないかもしれません。09年は、矢野(広一・TLホールディングス社長)さんがCJ-LINXの立ち上げにかなり力を注いでおられたこともあって、「もしかしたら」と思っていました。
森蔭 そうですか…。では、改めて否定しておきます。そんなことは決してありません。ターボリナックスはこれまで通りで、Linuxを中心としたOSSを事業基盤とするビジネスを展開していきます。
CJ-LINXは、日本企業の中国進出を経営コンサルティングや業務代行、ITサービスの提供など、さまざまな面で支援する企業ですが、ITインフラは重要な役割を果たし、Linuxを中心としたOSSがそれを支えています。CJ-LINXのIT基盤を支える意味でも、ターボリナックスがOSS事業を展開することは重要です。
──分かりました。ただ、商用Linuxの販売は、市場全体が縮小傾向です。競合他社を含めて、Linuxのライセンス販売は苦戦が続いています。
森蔭 厳しい市場環境であることは事実です。Linuxがコモディティ(日用品)化したことが、ビジネスとして成立しにくくなっている最大の要因です。
Linuxが先進技術であった時代は、ソフトの動作が不安定でトラブルも多かった。ユーザー企業が抱える人員のなかに、Linuxに詳しい技術者も不足していました。だから、商用ソフトの出番があり、当社のようなLinuxディストリビュータの役割も大きかったのです。
ここへきて、状況が変わりました。無償Linuxでも機能は豊富で、動作も安定している。Linuxの知識をもつ技術者もたくさん育ちました。その結果、有償Linuxを求めるユーザー企業が減ってきた。この流れが3・4年前に始まり、苦境に立たされているわけです。
──普及がビジネスを奪うという皮肉な結果を生んだわけですね。それでも、Linuxを中心としたOSSでビジネスは継続できる、と。
森蔭 継続というか、伸ばせます。確かに、無償Linuxを活用するユーザー企業は今後も増えるでしょう。ただ、別の観点からすれば、Linuxを求めるユーザーも増えるということです。無償Linuxではカバーできない部分で、ユーザーが求める機能やサービスは必ずある。それを提供できれば、成長は可能だと私は確信しています。
今年度は組織固めや従業員の意識改革などを進める時期と思っていますので、売上高は横ばいか微増を計画していますが、中期計画として3年後には売り上げを1.5倍に引き上げるつもりです。
Linuxビジネスの市場環境は厳しい。
だが、要望を反映した製品を用意すれば、必ず伸ばせると確信している。
まずは日本、それから中国も攻める。
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