ターゲット市場は日本+中国
──「原点回帰」というわけですね。
森蔭 これまでは、ユーザーの要望を推測で片づけて、プロダクトアウト的な考え方で製品開発に取り組んでいたかもしれません。商品を作り、棚に置けば売れるだろうという意識があったことも否定できません。社長になって強く思うのは、それを改めたいということです。
当たり前ですが、ターボリナックスが提供している情報システムのインフラ系製品(OSやミドルウェア)は、それ自体を求めるユーザーなんていないですよね。どのユーザーも欲しがるのは、そのインフラ系システムの上で動くアプリケーションやITサービスです。
当社の役割は、ユーザー企業やシステムを構築するITベンダーが、安定的なインフラを容易に構築できるようにすることです。それを徹底的に追求しなければなりません。
それを追い求めて、実を結んだのが、「Turbolinux Appliance Server」という製品です。LinuxにOSSのWeb管理ツールを付加したタイトルで、Linuxの知識がなくてもブラウザで容易に操作できるのが特徴です。この売れ行きが非常に好調で、OS単体の「Turbolinux Server」を上回る出荷実績があります。単純にパッケージとしてLinuxを流通させたり、ハードウェアにバンドルして出荷するだけでなく、プラスαの新機能を加えたことが受け入れられた要因でした。
この製品は、ユーザー企業の要望から生まれました。今回はWeb管理ツールと組み合わせたタイトルでしたが、こうしたユーザー企業の要望に適した機能を付加した製品を提供することが、成長への道筋だと思っています。
──ターゲットは国内だけでしょうか。中国進出支援ビジネスをグループ会社が手がけているだけに、中国市場での事業も念頭に置いているのでは?
森蔭 矢野(TLホールディングス社長)が、ターボリナックスの社長を務めていた時代から海外展開には積極的で、実は中国には調査・研究の意味合いも込めて、10年ほど前に進出しているのです。今はグループ会社として、中国のソフト開発企業であるアイソフトと共同で出資したターボシステムズと、中国市場での営業拠点として機能しているターボリナックスチャイナの2社を中国に置いています。マイクロソフトの知的財産を活用した製品を開発するソフト開発拠点を上海市に設置していたこともあります。
現状は、ターボリナックスチャイナが細々と製品を販売しているくらい。全売上高に占める中国での売上高は10%弱と小さいですが、11年以降には攻勢をかけるつもりです。中長期的には、全売上高に占める中国ビジネスの比率を3年後に30%まで引き上げたい、と。
──CJ-LINXの活発な動きをみていると、10年から一気に攻め込むような印象がありましたが…。
森蔭 いや、まずは国内です。ユーザーの要望に沿った製品をしっかりと開発し、市場に流通させる地盤を日本で築くのが先決。それがおぼつかなければ、中国でも成功はしませんから。
眼光紙背 ~取材を終えて~
Linuxを巡る環境は厳しい。それは競合ベンダーも同じで、最大手のレッドハットやミラクル・リナックスなども苦しんでいる。そのなかでもターボリナックスは、業績の低迷と新事業の動きの活発さが目立っている。
Linuxを使うすべてのユーザーが無償製品で満足するとは考えにくい。商用Linuxを提供するOSベンダーが、再び脚光を浴びる日が来るはず、と記者はみている。そのなかでも、国産の老舗ターボリナックスに対する期待は大きい。業績は芳しくないが、株価は6150円(2010年4月20日終値)とソフト開発業のなかで、決して低くないことがその証しだ。
熱っぽい矢野広一・TLホールディングス社長とは異なり、飄々とした雰囲気で感情を表に出さない森蔭社長だが、自信と決意を感じた。芯の強さは相変わらずだ。現場を知り、ユーザーの要望を大切にする森蔭氏にステークホルダーは期待している。(鈎)
プロフィール
森蔭 政幸
(もりかげ まさゆき)1967年6月生まれ。89年、コマツソフト入社。システム・プログラマとして大型汎用機向けソフト開発業務や、大手ユーザー企業向けのデータベース、ストレージ関連の企画運用・管理業務に従事する。96年、サイベースに移籍。システムエンジニア(SE)として、データベースおよびミドルウェアの導入・移行業務に携わる。00年、ターボリナックスに移り、OSS(オープンソースソフト)を基盤としたシステム構築に関連するコンサルティング業務を手がける。09年3月に取締役に就いた後、10年3月31日に代表取締役社長に就任。ターボリナックスの親会社であるTLホールディングスの取締役技術統括兼CTOを兼務する。
会社紹介
ターボリナックスは、サーバーおよびPC向けLinuxの開発・販売をメインに事業展開している。09年5月1日に純粋持株会社のTLホールディングスを設立したことに伴い、同社の傘下で事業展開する体制に変わった。他の事業会社には、日本企業の中国進出を支援するCJ・LINXや、ソリューション販売のゼンド・ジャパンなどがある。