Linuxディストリビュータの最大手であるレッドハットは、近年、ミドルウェア、そしてクラウド基盤分野というように、幅広い分野で存在感を高めている。一方で、多くの既存ベンダーが、とくにクラウド関連のオープンソース・ソフトウェア(OSS)プロジェクトに深くコミットするようになり、OSSディストリビュータの雄として、市場とどう向き合っていくかが問われている。2008年から同社を率いるジェームス・ホワイトハースト社長兼CEOに、クラウド時代の経営をどう考えるかについてたずねた。
もっともっと成長をスピードアップしたい
──2014会計年度(2014年2月期)の売上高は15億ドル以上で、前期比で15%の成長となりました。まずは、これをどう評価しますか。満足しておられますか。 ホワイトハースト これで満足という数字は決してありません(笑)。しかし、確固たる成長路線のスタートラインについたと思います。成長のスピードは、足下の2四半期でさらに加速しています。8月に締めた第2四半期は、前年同期比で18%伸びています。当社の従来の成長を上回る、10%台後半の伸びを示したことは、好材料です。
ただ、事業環境からすると、レッドハットはもっと速いスピードで伸びるべき企業だとも考えています。これまではクライアント/サーバーの時代でしたが、ご承知の通り、クラウドやモバイルの世界に移行しているなかで、ITには新しいアーキテクチャが求められています。その解こそ、OSSだと私は確信していますから。
──直近で、とくに好調な製品は? ホワイトハースト 今期から業績開示の方法を少し改めて、ミドルウェア製品と新しく台頭しているOSSのIaaSソフト「OpenStack」やPaaSソフト「OpenShift」などのプロダクトを、「ニュービジネス」として切り分けて内訳を発表しています。ここは非常に好調で、第1四半期は5000万ドル規模に達しました。通年に換算すると2億ドルで、前期比45%増のペースで伸びています。
──そのなかでも現在の成長を支えているのはどの製品ですか。 ホワイトハースト ミドルウェア、とくにアプリケーションサーバーの「JBoss」です。Open StackやOpenShiftはビジネスとして初期段階で、売り上げの貢献度はまだそれほど大きくはありません。
──JBossが伸びている要因は何でしょうか。 ホワイトハースト まず、OSSのミドルウェアプロジェクトが成熟して勢いを増したことで、ITベンダーが提供する既存の独自製品、例えばIBMの「WebSphere」やオラクルの「WebLogic」などから、JBossに置き換えるという動きがあります。また、クラウド化が進んだことで、アプリケーションの構築において、小さなコンポーネントを統合して機能を実現するというアーキテクチャが主流になりつつあります。そうすると、コンポーネント同士のやり取りを司るミドルウェアが従来以上に重要になりますし、新しいアプリケーションとレガシーなアプリケーションの連携も必要になります。JBossでは、この1年間でそうしたニーズの解となるコンポーネントをいくつも出していて、それがユーザーの支持を得ています。
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