ワークスアプリケーションズは、従来の企業向けITシステムとはまったく違う発想のERP「HUE(ヒュー)」を発表した。長らく企業の基幹システムのコア技術として扱われてきたリレーショナルデータベース(RDB)に依存せず、グーグルなどが採用する分散型の新しいDB技術を取り入れたクラウドネイティブな製品だ。グローバルのトップベンダーも含め、基幹システムの分野では前例のない試み。業務アプリケーションの分野で、日本から革新の波を起こすポテンシャルを秘める。HUEを武器に、グローバルのERP市場でトップベンダーの座を狙う同社の戦略を、牧野正幸CEOにうかがった。
ERPはコモディティ化していない
──10月にHUEを発表してから2か月が経ちました。反響はいかがですか。 牧野 想像していたよりも、はるかに大きい反響ですね。2015年の4月に受注を開始する予定ですが、300社近くのお客様からすぐにでも導入したいという話をいただいています。
──HUEでは、リレーショナルデータベース(RDB)ではなく、グーグルなど先進クラウドサービス企業のコア技術となっている分散キーバリューストア(KVS)をデータベース(DB)に採用していますが、基幹システムの分野では前代未聞の試みです。 牧野 圧倒的なハイユーザビリティ、つまりはコンシューマアプリに負けない使い勝手を目指した結果です。ERPはコモディティ化したといわれるようになって久しいですが、本当にそうなのかという疑問がありました。従来のERPは、当社製品も他社製品も、グローバルで日次連結会計管理をやろうとか、グループ人材を管理しようとか、そういう経営層からリクエストされた業務改善のニーズには応えてきました。しかし、こうしたシステムを日常的にオペレーションしている部門の担当者が、新しいパッケージを入れて感動を覚えたなんていう話は聞いたことがありません。ここに改善の余地があるわけです。
SIerやユーザーの情報システム子会社、情報システム部門にしても、業務システムが今のままでいいのかという何となくモヤモヤした気持ちをずっと抱えてきた。彼らからも、HUEが今後の業務システム全体の進化の方向性を提示したという声をいただいています。
──業務システムのオペレーションの現場は、一般的に変化を望みません。使い勝手だけでは、説得力がない気もします。 牧野 変化を望まない人が多いのは確かです。ただ、それは製品が少しずつしか進化してこなかったからです。ほんの少し便利になるからといってオペレーションを大きく変えるのなら、受け入れられないのは当然でしょう。しかし、HUEくらい劇的にすべてが変わると、話は別です。今回は、経営者はもちろん、現場の意見として、こんなに便利になるなら明日にでもHUEを導入したいというユーザーが非常に多いんです。
──具体的に何に魅力を感じているのでしょう。 牧野 説明しきれないくらいですが、とにかく、オペレーションする人の大きな負担になっている入力作業を大幅に減らすことができますし、システムの動作スピードも劇的に速くなります。これはあらゆるユーザーが喜ぶことで、一度体験したら驚くし、過去のシステムには戻れなくなります。これまでご説明したなかで、HUEを入れるメリットがないとおっしゃったユーザーは、一社も、いや一人もいませんでした。
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