ピープルソフトにまた戻る気がしていた
──パートナーにも、そうしたノウハウを求めるということですか。 金 その通りです。だから、パートナーの社数を増やすというよりは、哲学を共有し、ワークデイを導入できる認定コンサルタントを増やしていきたいと考えています。
──財務会計をいつ日本に投入するかも、市場の関心事だと思います。2~3年以内にはというお話をされていましたが……。 金 まさにマーケットの声次第というところはあります。ローカライズという意味では、当社は継続してイノベーションしている企業なので、テクニカルな問題はあまり障害にはならないでしょう。ニーズが高く、売れると判断すれば、市場投入は早まる可能性はあります。今は、総合的な計画を練っている段階です。
ただ、やはり基本は人事給与で、そこにセットで財務会計も導入してもらうかたちになるでしょう。グローバルでもそうですね。ヒトをまずはうまく組織内で回して、そこにカネ、モノを付加していくというのは、まさにピープルソフトがやっていた手法です。
──ワークデイは、お話にあったように、オラクルに買収されたピープルソフトの経営陣が立ち上げた会社ですが、金社長ご自身も、過去、ピープルソフトに在籍されていました。再びピープルソフトの経営陣と一緒に仕事をすることになったのは、必然だと感じますか。 金 不思議なんですが、ピープルソフトを離れる時に、また戻ってくることは予測していました。この仲間とはいずれ何かやるだろうと。ピープルソフトのカルチャーは、社員、パートナー、お客様も含めて、家族のような関係を構築しようというものです。時には喧嘩をしたとしても、信頼関係で結ばれ、お互いを尊重するコミュニティをつくるというか。これがワークデイに引き継がれ、顧客満足度の向上にも間違いなくつながっているし、私自身、大きな魅力を感じている部分です。
──日本市場では、どんな目標を掲げていますか。 金 具体的な数字を申し上げるのは難しいですが、一般的に外資系ベンダーは、日本市場に進出して5年くらいでグローバルの売り上げの5%ほどを占めるようになれば、まあ成功というイメージですよね。私は日本法人の全社における売上比率で、他のベンダーが過去になし得なかった水準を達成したいと思っています。
目標は大きくもったほうがいいですよ。仮に達成できなくても、失敗から学ぶことのほうが大きい。とにかく、アグレッシブに日本の市場を攻めていくつもりです。

‘われわれの社員やカルチャーを含めて、製品だけではない価値をトータルでデリバリすることが一番大切だと思っています。’<“KEY PERSON”の愛用品>アイデアを自由に書き溜める 日々考えていることをA5判のノートにメモしている。時には絵で表現したり、リアルタイムにさまざまなビジネスのアイデアを書き記すには最適なツールだという。新卒で就職した頃からの習慣で、「デジタルデバイスでは代用できない」とのこと。
眼光紙背 ~取材を終えて~
ワークデイは、間違いなくERP市場のイノベーションをけん引する企業だ。金社長が話してくれた同社の哲学は、「社員や顧客、パートナーが、それぞれ家族のような関係を構築すべし」というもの。イノベーティブな先進企業というイメージからは意外な感じもするが、既存の他社製品とは違う、新しい価値を訴求するからこそ、ステークホルダー間の信頼関係を何よりも大事にしているということなのだろう。米オラクルによる旧ピープルソフトの買収劇の経緯などから、既存のERPベンダーに対する強烈な対抗意識をもって事業を展開していると勝手に想像していたが、すでにその次元にはいないようだ。
金社長は、自らの経営スタイルを、「オーケストラの指揮者のようなもの」と話す。それぞれの社員が責任と役割を果たし、組織としてのパフォーマンスを最大化するために何ができるかを常に考えている。最も重視しているのは、調和だ。休日には、山梨県に借りた200m2の土地で農業に勤しんでいることだが、金社長にとっては、調和を意識した経営のトレーニングなのかもしれない。(霞)
プロフィール
金 翰新
金 翰新(Hanshin Kim)
国際基督教大学教養学部社会科学科卒。プログラマやシステムエンジニアを経て、1996年に米ピープルソフト(現オラクル)の日本法人立ち上げに参画。2003年に、BIベンダーの仏ビジネスオブジェクツ(現SAP)日本法人に移籍し、経営企画室長などを歴任。09年、米マイクロストラテジーの日本法人に移り、マーケティングやプリセールスを統括。13年8月より現職。
会社紹介
旧ピープルソフトの経営陣が設立したクラウドERPベンダーである米ワークデイの日本法人。2013年8月設立。製品のローカライズやサポート体制の構築を進め、2015年1月から新規顧客開拓をスタート。本格的に日本市場での活動を開始した。グローバル企業の日本ブランチでは、すでに150社以上の導入実績がある。当面は、最も強みをもつ人事管理システムを提供し、数年後には財務会計システムも日本市場に投入する方針。米ワークデイは、14年度(14年1月期)の売上高が4億6900万ドル。15年度は7億6500万ドルの見込み。