オンラインストレージアプリとしては後発ながら、全世界で3億人のユーザーを獲得し、法人向け商材である「Dropbox for Business」の契約社数が10万社を超えた米ドロップボックス。成長を続ける新興ベンダーが、昨年10月に日本法人を設立した際に、トップに就任したのが前シマンテック社長の河村浩明氏だ。エンタープライズITの世界でキャリアを積んできた河村社長は、ドロップボックスの日本市場開拓をどう舵取りするのか。
使い勝手のよさに大きな魅力を感じた
──エンタープライズ向けITの世界で活躍されてきた河村さんが、急成長しているとはいえ、新興アプリベンダーの日本法人立ち上げに参画され、トップに就任されたのは驚きでした。もともとDropboxに関心をおもちだったのでしょうか。 河村 セキュリティベンダーであるシマンテックの社長をやっていたときから、実はお客様に「うちの社員がDropboxを使ってるんだけど、セキュリティの面でどう思う?」と相談されることはよくありました。かなり前から、企業の業務の現場では、Dropboxがたくさん使われていて、ベンダーの日本法人もなく、宣伝広告もしていない商材を、なぜみんなそんなに使っているのか、不思議に思っていたんです。
それで、息子たちにその話をしたら、長男と三男がすでに使っていて、「お父さん遅れてるね」といわれてしまった(笑)。悔しかったので使ってみると、なるほどこれはすごいと感じました。そんなときに、ヘッドハンターから米ドロップボックスが日本のオペレーションを開始するので、トップとしてやってみないかという話をいただいたという経緯があります。
──Dropboxはオンラインストレージサービスとしてはどちらかというと後発ですよね。何がそれほど魅力だったのでしょうか。 河村 確かに、当時すでに、シマンテックも含め、オンラインストレージサービスはすでにたくさんのベンダーが提供していましたが、Dropboxは製品としての魅力が抜きんでていたと思います。完全なマルチプラットフォーム対応で、同期の技術を追求したことで、さくさく動く圧倒的な使い勝手を実現している。さらに、有料プランであれば保存ファイル数も容量も無制限です。ユーザーがやりたいことを即座にストレスなくできるサービスであり、シンプルなことですが、これだけの要素で完全に差異化できているんです。
──製品の魅力に惹かれたということですね。 河村 日立系の日製産業に勤めているときに、一番長くやったのは、日立製のディスクドライブをサーバーベンダーに販売する仕事でした。その後、EMCでストレージシステムを日本の大手企業に展開するというビジネスもやりました。当時はクラウドという概念はなかったけれども、ストレージのあるべき姿ってこんなイメージかなと漠然と考えていたものに、Dropboxは非常に近くて、興奮を覚えました。日本のホワイトカラーは生産性が低いといわれて久しいですが、彼らのワークスタイルそのものを変革できるポテンシャルを秘めていると思っています。
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