NTTと日本IBMが折半出資する日本情報通信(NI+C)は、専門的で付加価値の高い“ハイバリュー・ソフトウェア”を軸にビジネスを伸ばす。IBMが力を入れているコグニティブ・コンピューティング「Watson」については「ハイバリュー・ソフトの本命」と位置づけ、本格的な活用に向けて強い意欲を示す。こうした既存の事業とは別に、新規事業の創出にも積極的に取り組んでいくことで、ビジネスの新機軸を打ち出す構え。今年、NI+C創立30周年を迎えるタイミングで廣瀬雄二郎社長に経営の話を聞いた。
売り上げが半減してしまう
──IBMは事業ポートフォリオを大きく変えており、日本でも少なからぬIBMビジネスパートナーが戸惑いを覚えています。御社はいかがですか。 廣瀬 NTTと日本IBMの折半出資のSIerである当社としては、双方のグループの目指す方向性が合致しているかどうかが、合弁事業を続けるうえでとても重要です。実はNTTとIBMの方向性は大変似通っているんですよ。
IBMは周知の通りハードウェア販売からソフト・サービス事業へと大きくシフトしていて、NTTグループも通信インフラからアプリケーション、サービス領域まで幅広く手がけています。ただ、NTTの出自はもともと通信であることから、アプリケーションの領域はIBMに一日の長がある。当社としてはNTTグループの強みも取り込みながら、世界最先端を行くIBMのアプリケーションやサービスも全面的に吸収して、日本のユーザー企業の課題解決に努めていくのが基本方針です。
──御社は歴史的にIBMの旧RS/6000(現Power Systems)サーバーやAIX OSの系列システムを強みとしておられました。つまりプラットフォームの比重が大きく、ソフト・サービスへのシフトは大きなチャレンジではないですか。 廣瀬 もちろん、そのまま実行したら売り上げが半減してしまいますので、ソフトウェアでも“ハイバリュー・ソフトウェア”と呼ばれる領域に力を入れています。旧RS/6000系のユーザーは比較的大きな企業が多いですので、例えば、バリューチェーンの「Smarter Commerce(スマーター・コマース)」、データ連携の「Cast Iron(キャスト・アイアン)」、データ分析の「Cognos(コグノス)」、データ統合の「PureData System for Analytics」、データ監視の「Guardium(ガーディアム)」といった専門的で付加価値の高いソフトへのニーズが旺盛です。
──そういえば、最近のNTTグループの企業メッセージは、まるで「IBMか?」と見まごうばかりに課題解決、付加価値重視をうたっていますね。 廣瀬 IBMが変化するのと同様に、NTTグループも変化しているということです。ただし、IBMの真似ではありませんよ。当社自身、早くからハイバリューソフト領域に着目しており、独自商材を開拓することも少なくありません。かつて独立した会社だったCast Ironは、当社が国内販売を本格化させようとした矢先の2010年、IBMが買収するハプニングもあったほどです。IBMは積極的にソフト会社を買収し、NTTグループも同様のハイバリューを指向していますので、方向性は合致しているわけです。
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