法人向けIT機器を取り扱う販社から、近年目立った伸びを示していると紹介されることが多い商材がNAS(ネットワークアタッチトストレージ)だ。従来はSOHOや中小企業向けの製品を主力としていた台湾のNAS専業ベンダー各社が、エンタープライズ市場でも存在感を強めている。なかでも、コストパフォーマンスのよさと、NAS上に仮想マシンを作成して任意のOSを実行できる機能などで人気を集めているのがQNAP Systemsだ。同社の郭博達CEOは「クラウドの普及によってNASのニーズはますます高まる」と話す。
クラス唯一の仮想化プラットフォーム機能
──台湾にはQNAPと同じように、SOHO・中小企業向けを主力として成長してきたNAS専業ベンダーが数社存在します。どのように差異化を図っているのでしょうか。 郭 QNAPは、ストレージとしての基本機能のみならず、管理のしやすさ、アプリケーションの実行、仮想環境の提供など、さまざまなフィーチャーをNASに盛り込んだという点で、世界的なパイオニアだと自負しています。他社もNAS上で動作するアプリケーションには力を入れているようですが、QNAPにはすで200近いアプリケーションが提供されていますし、加えて仮想環境をもっているのは、このクラスではQNAP製品だけの特徴です。
──QNAPのNAS上で利用できるアプリケーションにはどのようなものがあるのでしょうか。 郭 法人向けとして代表的なものには、IT資産管理アプリがあります。ネットワークにぶら下がるPCにWindows Updateが適用されているかをチェックしたり、リモートでバックアップを作成したり、バックアップからファイルを復旧したりといった機能をもっています。WordPressなどのCMSも最近は人気ですね。独特なものとしては、デジタルサイネージの管理コンソールや、複数のネットワークカメラの映像を録画・管理するNVR(ネットワークビデオレコーダー)といったアプリもあります。
──仮想マシンを動かすことができるということで、こうなるとNASというよりも従来でいうサーバーそのものだと思いますが、ネットワークに接続さえすればすぐに使えるというNASの利便性が損なわれる恐れはないのでしょうか。 郭 標準的なNASとしての機能は、設置後すぐに使える状態になっています。それに加えて、アプリのインストールも仮想マシンの作成も、スマートフォンのアプリストアのような「App Center」画面から簡単に行えます。仮想環境を利用すれば、Windows、Linux、Androidなど任意のOSをNASの上で実行できるので、例えば1台のNASの上で複数のウェブサイトをホストしたり、社内向けの業務アプリケーションを動かしたりといった使い方が可能です。
お客様の使い方として、従来のサーバーと当社製品で重なるケースが一部出てきていることは事実です。お客様がVMwareとWindows Serverで独自に構築していたシステムを、QNAPのNAS上の仮想環境に移行したという例もあります。なぜそのような移行をされたかというと、われわれの製品のほうが圧倒的にシンプルだからです。自分でサーバーを用意する場合、仮想環境の構築だけで数時間もかかることがありますが、QNAPのNASなら管理画面からGUIで操作するだけで、わずか10分で済みます。
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