利益を増やして次の投資の準備を
──しかし、そうしたビジネスモデルは、収益構造の改善には有効でしょうが、売り上げの成長は実現しづらいのでは? 今は、SI、プロダクト販売からサービスにビジネスモデルが切り替わり始めているタイミングなんです。誤解を恐れずに言いますが、おっしゃる通り、売り上げは一時的には減ります。でも、ここで重要なのは、利益を増やして次の時代のための準備をすることなんです。事業環境は誰がみても確実に変化していて、シュリンクするのがわかっている既存のビジネスモデルにすがりついていては、未来はありません。覚悟を決めて、減るものは減るんだという前提を受け入れる。そして、そこからどうやって伸ばすのかという視点で新しい投資を考えていくという割り切りが必要だと私は思います。
富士通グループ全体にとっても、新しいビジネスを立ち上げて、新しいかたちで利益を獲得できるよう、短期的な売り上げの伸びに過度にこだわらず、次の成長に向けた十分な備えをすべき時期にきていると感じます。大げさかもしれませんが、富士通FIPが先頭に立って、新しいサービスモデルを実践し、富士通グループの変革をけん引していくという気概で経営にあたる覚悟です。
──具体的な数値目標などは定めますか。 一昨年度は単体で1000億円の売上高を達成しましたが、2014年度は残念ながら大台に届きませんでした。もう一度、単体で1000億円を超える売上高を、新しいサービスにシフトしたうえで達成するという目標を定めています。富士通とFIPのDCビジネスを統合・再編したことで、利益が出やすい構造になったはずです。この効果をなるべく早く現実のものにしなければなりません。
──そのための課題は? いろいろなビジネスプロセスが少し古いかなとは感じています。意思決定というか、最終的な決裁までのプロセスが、富士通と比べても複雑で、結果的にスピード感が失われているという印象です。新しいサービスを中心としたビジネスモデルにシフトし、競争力を発揮していくためには、スピードがより重要になるのは間違いありません。社員とコミュニケーションを密に取りながら、改善の道筋をつけたいですね。

‘お客様のニーズをうまく吸い上げてサービスを組み立てる能力、そしてそれをしっかり売っていく営業力は、富士通グループのなかでもとくにすぐれている。’<“KEY PERSON”の愛用品>アイデアの記録はアナログスタイル 手帳は7~8年、ペンは15年ほど、同じタイプのものを使っている。日々印象に残ったことやビジネスのアイデアなども書き残す。「IT企業で長年働いてきたが、自分自身の記録を残すのはアナログがしっくりくる」そうだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
富士通グループのクラウドインフラを担うという責任感は相当強い。メガクラウドと競合するという方針は富士通も示しておらず、適宜、協業も視野に入れるが、「富士通グループの特色は、少しウェットな世界というか、お客様に寄り添って、痒いところに手が届くSIの営業を徹底してやってきたこと。そのおかげで今のカスタマーベースがある。『使いたいだけお客様の責任で使ってください』というようなクラウドベンダーとは違う世界でビジネスを展開してきた」と、富士通グループならではのトータルなサポート力をベースに、競争力のあるサービスを提供できるという強い自負心をのぞかせる。
インターネットバンキングの立ち上げや、携帯電話からも利用可能な競馬場の投票システム運用に携わった経験から、社会システムがどんどんインターネット上で動くようになっていく変化の早さに脅威を感じたという。「常に勉強して、新しい仕込みをしていかなければならない」と胆に銘じながら、新たなビジネスモデルの構築に挑む。(霞)
プロフィール
米倉 誠人
米倉 誠人(よねくら まこと)
1961年1月生まれの54歳。1984年、名古屋大学工学部機械工学科を卒業し、富士通に入社。アウトソーシング事業本部IDCソリューション部長、同事業本部インテグレーションマネジメント統括部長、同事業本部長、ネットワークサービス事業本部長、執行役員兼サービスプラットフォーム部門アウトソーシング事業本部長兼サービスマネジメント本部員、執行役員兼サービスプラットフォーム部門アウトソーシング事業本部長兼プラットフォーム技術本部長兼サービスマネジメント本部員などを歴任し、今年4月より現職に。
会社紹介
1977年設立。全国に展開するデータセンター(DC)を基盤に、システムの企画から開発、運用、保守、業務まで、顧客のシステムのライフサイクルをトータルにサポートする「アウトソーシング」、IaaS、PaaS、SaaS、BPOなど、幅広く展開する「クラウド」、蓄積してきた業種・業務ノウハウやSIスキルをベースにした「ソリューション」の三事業が柱。今年4月1日には、富士通本体とDC事業を統合・再編し、DCサービスを一手に担うことになった。