SIer国内最大手のNTTデータとシンクタンクの日本総合研究所の折半出資会社であるJSOLは、ITとコンサルティングを融合させた独自のビジネスモデルを構築中だ。中村充孝社長が陣頭指揮をとって、ITコンサルティング機能を強化。ユーザー企業の業務に深く入り込んで、顧客のビジネスの成功に重点を置いたシステム構築(SI)を推し進めている。ビジネスを成功に導かなければ、顧客からの支持は得られず、どれだけすぐれたテクノロジーをもっていても宝の持ち腐れになってしまう。中村社長がまだ駆け出しの頃、実はこの点で大きな挫折を味わっている。
「じゃあ、立て直してやる」と渡米
──中村社長は、NTTデータ東海(名古屋)の社長や、NTTデータの欧州法人トップも務められるなど、地方から海外まで幅広い仕事を経験されておられますが、その間のエピソードなどを教えていただけませんか。 そうですね、私の原体験は名古屋でも欧州でもなく、アメリカなんですよ。20年以上前の話になりますが、1992年、今でいうERP(統合基幹業務システム)に相当するパッケージソフトをベースに、アメリカでSIビジネスを手がけていました。ところが、これがまったく売れなかった。
当時の私は若かったこともあり、「じゃあ、立て直してやる」と勇んで渡米したのですが、結果は変えられませんでした。できた仕事といえば、アメリカの現地法人の事業や従業員を同業他社に頭を下げて引き継いでもらったり、転職を斡旋したり、それでもダメだったら辞めてもらうしかなかった。私が受けもったロサンゼルスのオフィスは50~60人とそれほど大きくはなかったのですが、私には衝撃的でつらかったですね。どんなに理想が高くても、よい製品をつくっても、顧客や市場に受け入れられなかったら、悲惨な結末にしかならないことを痛感しました。
──いきなりのつまずきですね。 あのときは、いろいろなことを学びました。今、JSOLのトップを任され、「変化の中で進化するICTサービスコーディネーター」という新しいビジョンを若手社員らの智恵を借りて作成しました。“変化に適応しながら進化するぞ!”との意気込みなのですが、決して、きれいごとではありません。ユーザーニーズや市場の変化に適応できず、進化できなければ事業が成り立たなくなり、最悪、路頭に迷うことになるわけですから。20年余り前に、これができずに失敗した私が言うのですから説得力ありますよ(苦笑)。
──変化適応や進化の大切さはわかるのですが、では、具体的にどうすべきとお考えですか。 SIerの観点でみれば、やはり客先に足繁く訪ねて、どういったニーズがあるのか徹底的に聞き出すことだと考えています。「オレはJavaを極めたい」「私はビッグデータ解析をとことん追求する」というのも、もちろん結構。ただ、SIerにとってのJavaやビッグデータは、ユーザー企業の経営課題を解決し、売り上げや利益を伸ばすためにあるんですよね。だったら、やはりユーザーの話を聞き込むことを重視すべきです。
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