ネットワーク機器ベンダー大手のF5ネットワークスジャパンのトップに就いた古舘正清氏は、就任後わずか3か月で組織をまとめ、米本社に日本市場専任の「品質担当役員」を置くことを決めてきた。9か月間、トップが実質不在の同社だったが、古舘氏の就任を機に、再び成長路線へドライブする。ネットワーク機器ビジネスは、ソフトウェア・デファインドへの対応やクラウド型サービス商材の拡充、業務アプリケーション起点のビジネスへと大きく変わろうとしている。その岐路に立つ同社をどう舵取りしていくのか、古舘社長に話を聞いた。
トップ不在のまま、9か月が経過
──F5ネットワークス日本法人のトップに就任されて3か月が経つわけですが、どのような施策を打ち出しておられますか。 ネットワーク機器業界は現在、大きな変化の途中にありますので、まずはユーザーへの“提案の質”の向上や、顧客起点の考え方の徹底、販売パートナーとのエコシステム形成の推進、顧客・パートナーとのハイタッチな関係の強化、企業としてのメッセージを正しくユーザーやパートナーに伝えるなどの原理原則を確認しました。それぞれのテーマに担当役員を決めて、1か月ごとに進捗をチェックしてきました。この7月で3か月が経ちましたので、8月からは本格的に成長へのドライブをかけていきますよ。
──ずいぶん矢継ぎ早で、気が早いですね。“古舘体制”になった直後から役員や社員の方々は大わらわではないでしょうか。 えっ!? そうですか。普通ですよ。メーカーとして肝心の製品については、日本法人だけでは限界がありますので、就任してすぐに米本社に赴き、日本市場専任の品質担当役員(チーフ・クオリティー・オフィサー)を置いてくれと要求し、同役員の新設が決まっています。米本社のCEOを含めて30人余りの役員や幹部と徹底してディスカッションをして、日本市場では品質がとても重視されることなどを改めて強く認識させてきました。これからは日本のユーザーの要求は、われわれ日本法人から直接、米本社の日本専任の品質担当役員に伝え、製品の改善に迅速につなげていきます。ベンダーである以上、まずは製品がよくないとダメですからね。
──新社長が外部から着任するなり、四つも五つもタスクを同時に走らせ、3か月後には“成長へのドライブ”とか言われても、組織はきちんと動くものですか。 実は、日本法人の私の前のトップは、昨年7月に諸事情があって退任しているんですね。この間の約9か月は、事実上、トップ不在のままでした。事業部門のそれぞれ担当役員や社員は優秀な人ばかりですから、事業ごとの目標に向かってビジネスを進めるのですが、会社としての方針に飢えていた印象を受けました。そこで、役員や社員、顧客やパートナーの意見を聞き込んで、まずは優先して走らせなければならないタスクを絞り込み、そのうえで先に述べた提案の質の向上や、エコシステムの強化といった足場固めをしたわけです。
「社長が方針を出して、結果責任は社長が負う」──このやり方が正しいのかどうかはわからないけれども、恐らくこう言ってくれる人を皆が必要としていたと思います。私としてはメンバー全員が全力でプレーしてほしい。なので“見逃し三振”だけは絶対にするなと言っています。
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