クラウドコンピューティングの普及により、IT業界の新たな勢力として台頭しているクラウドインテグレータ。長らくIT業界をけん引してきた大手SIerと比較すると事業規模はまだ小さいが、エンタープライズ分野でのクラウド活用が一般化しつつあるなかで、クラウドインテグレータの影響力は日々増している。なかでも技術力の高さに強みがあると自認するテラスカイは、4月30日に東京証券取引所マザーズ市場への上場を果たすなど、いま最も勢いを感じるクラウドインテグレータだ。株式上場を果たし、次の一手が気になるところだが、佐藤秀哉社長の強い決意は、意外にも“終活”にあるようだ。
次の成長は別の人に任せたい
──創業以来、クラウドインテグレータとして事業を展開してきたわけですから、株式上場を果たした今、もはやクラウドなんて“レガシー”だよというくらいの達成感ですか。 いや、う~ん。よく上場=ゴールみたいな話がありますよね。私たちは会社の成長のために上場したのであって、上場=ゴールはないです。今のところは、計画通り、もくろみ通りで、上場した効果が出ているという程度です。
──どのような効果ですか。 人材の採用面で、応募者の数や質が上がってきています。とくにエンジニアは、安定した環境で自分のスキルを磨くことを望みます。安定した働きやすい環境の実現には、上場が必要でした。もう一つは信用力。大企業や官公庁と取引するときのハードルが、上場でほとんどクリアできます。その点で上場には意味があります。問い合わせも増えましたし。直接の取引を行うに足る会社として、認知度が高まったのだと思っています。
──クラウドインテグレータとして、現時点でどれくらいの位置にいるとお考えですか。 たぶん、すでにトップではないでしょうか。クラウドインテグレータとしては、日本でナンバーワンだと思っています。
──SIerも入れると、先には巨大な企業が控えていますが。 遠い将来では、大手SIerに負けない会社になってほしいと思いますが、それは私がやる仕事ではないですね。私は今、52歳ですが、60歳で全部やめようと思っているんですよ。
──社長を? 今でも新しいテクノロジーについていくのは厳しい。イノベーションについていけないような年齢で、IT企業のトップをやってはいけないと思うんです。60歳を過ぎたら、老害でしかない。若い人にこの会社を引き渡して、次の成長はその人が担えばいいんじゃないかと。
──株式上場したばかりなのに意外です。 60歳では辞めないでしょって言われますけど、私は絶対に辞めますから。それは宣言できます。ここ(タイトル)に60歳で引退って書いてもらってもいいです(笑)。
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