情報サービス産業協会(JISA)の横塚裕志会長は、「ソフトウェア・デファインド・ビジネス」をキーワードに、ソフトウェア開発に携わるエンジニアの育成支援を重視する方針を示す。社会が成熟するに伴い、大規模なソフトウェア開発はぐっと少なくなり、「規模から価値への転換」が一段と進行する。エンジニアはユーザー企業のビジネスを成功に導くにはどうすべきかを考える力量が求められるとともに、情報サービスベンダーの経営者は、こうした技術とビジネスの両方を広い視野で捉えられるエンジニアの育成に投資することが、「今後、勝ち残るための重要な経営戦略になる」と説く。
ソフトウェアでビジネスを動かす
──会長就任から2か月あまり。今後、JISAをどのように運営するか、方針は固まりましたでしょうか。 まずは、わかりやすいメッセージとして「ソフトウェア・デファインド・ビジネス」というキーワードを掲げました。近年、盛んに言われている「ソフトウェア・デファインド・○○」の“○○”の部分に“ビジネス”を当てはめたものです。ソフトウェアによってユーザー企業のビジネスを捉え、発展させていくことが、私たち情報サービス業の基本だとはっきりさせることが狙いです。
──ネットワークやデータセンター、ストレージなどソフトウェアで定義(デファインド)して、動かそうとする取り組みが盛んに行われていますね。 それだけソフトウェアの比重が高まっていることの表れで、ユーザー企業のビジネスの成否も、ソフトウェアをうまく活用できるかが重要なポイントの一つになっていることは間違いありません。もっと踏み込んで言えば、あらゆる産業でソフトウェアの重要度が増しており、このソフトウェアをつくる情報サービス業の責任も重い。ソフトウェアを担当する私たちがもっと頑張れば、日本の産業全体の国際競争力の向上により大きな貢献が可能になります。
──とはいえ、ソフトウェア開発だけでは、なかなか付加価値が高められないとの声も聞かれますが。 だからこそ、ソフトウェアでデファインドする“ビジネス”なんですよ。ソフトウェアはあくまでも“道具”であり、ユーザーのビジネスを成功に導くことが目的なのです。手段と目的を取り違えてしまうとユーザーはもちろん、われわれ業界も幸せにはなれない。ユーザーのビジネスの成功を目標に据え、その手段であり、道具であるソフトウェアを使い倒すべきでしょう。したがって、ソフトウェア・エンジニアの皆さんには、道具であるソフトウェアに磨きをかけるのはもちろん、もうちょっと視点を引いて、ユーザーのビジネスもしっかり視野に入れていく必要があるのです。
私自身、SEひと筋でこれまでやってきたこともあって、JISAは、これまで以上に情報サービス業界で働くエンジニアの方々の応援団であり続ける。確かに米国西海岸のような華々しさや、カリスマエンジニアが脚光を浴びるようなケースは、残念ながら少ないのかも知れませんが、日本の産業を支えていることに誇りをもってもらいたい。JISAとしてもエンジニアをもっと支援できるよう働きかけていきたいですね。
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