営業の専任組織をつくるのは、まだ先
──実際に、IoTソリューションとして、SI+組み込みのような案件は出てきているのですか。 世の中には出てきつつありますが、当社の案件としてはまだ現実のものになっていませんね。
──新しい価値を市場に問い、実際の案件獲得につなげるには相当大きな労力が必要になりそうです。アカウント営業のようなユーザーにしっかり入り込んだ組織が、ニーズを先取りして提案していくようなかたちになるのでしょうか。 本来はそうなのでしょうが、当社はここ何年か、「営業」という組織をもっていないんです。
──営業組織がないというのは驚きです。そうすると、例えばSIはほとんどが富士通の案件ということですか。 確かに富士通の案件は多いですが、3割は独自案件ですね。
──それでは、単独で受注している案件はどうやって獲得しているのでしょうか。 組織としての営業はなくても、機能としてはあるんです。例えば、システム開発の現場でチーフが周辺の課題をみつけたりして、それを社内で吸い上げて、揉んだうえで追加の新しい提案につなげていくとか、そういうパターンですね。それで信頼していただいて、長く直接おつき合いをさせていただいているお客様も結構います。
お客様の現場に張りついている当社の技術者集団は、現状の課題をみつけてそれを解決する機動力はあるのですが、新しいビジネスを打ち出して攻めていく力が少し弱い。ですから、当社のさらなる成長のためには、技術者も営業的なマインドをもつというか、マーケットを知り、お客様の立場に立って、次にどんな提案をすべきかを考えられるようにならなければなりません。現場のチーフや課長、部長、あるいは私のような立場の人間も含めて、マネージャーやトップ、全員がセールスをしていくという感覚をもたないといけないと思っています。
──既存の顧客に対しては、あらゆる顧客接点に自社技術に精通した人が配置されているという見方はできそうですが、営業の専任組織がないと新規顧客の開拓は難しそうですね。 強みと課題、両方があると思っています。技術者はすでに現場をもっていますから、新しい提案をしようという意識がちょっと希薄になりがちなんですよね。だから将来的には、数字のノルマをもたせた営業の組織が必要になる可能性はありますが、まだ少し先でいいのかなと思っています。その前に、きっちりとものをつくることができて、かつお客様の将来に必要な提案を考えられるような人材をたくさん育てていくべきだと考えています。というのも、営業のテクニックだけで売るようなスタイルでは、当社の強みは生きないからです。まずは、今いるメンバーに成長のためのマインドチェンジをしてもらって、きちんと納得して頑張ってもらう。その過程で、「やっぱり営業という組織がないとまずいよね」と誰かが言い出して、「それならどうやってみる?」と具体的に現場感のある議論ができていくと、いい会社になっていくと思っています。
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