2020年、東京五輪は「実験場」
──クラウドやサービスビジネスについては、どう拡大していきますか。 セキュリティソリューションの「FENCE(フェンス)シリーズ」や建設業向けERPソリューション「CAP21」など、実績のある独自パッケージがありますので、これらはクラウド化のニーズが高い素材だと思っています。すでにクラウドでの提供を始めているものもありますが、これらの素材を集めて、お客様により大きな価値を感じてもらえるかたちに何とか仕立てていきたいですね。
また、7月末には、運用サービスの新たな拠点を伊万里市に新設することも発表しました。地元のITベンダーとの協業によるもので、地方の力を活用して競争力のあるビジネスモデルをつくっていくのも重要だと考えています。
──ITの市場環境としては、2020年までは大丈夫だが、そのあとが厳しいとみる経営者も多いです。小島社長はどうみておられますか。 読み切れない部分はあるんですが、富士通グループの一員としてみると、「2020年までの間に1回つらいことが起きる」という感じはあります。その時に備えて、例えば2020年までに、現在の約2倍にあたる売上600億円の会社になれるかとか、自分たちがIoTで本当にメインプレイヤーに近づけるのかとか、そういう問題意識をもってビジネスを拡大していかなければならないと思っています。ですが、2020年以降は、正直に言って「今はわからん」という感じです(笑)。
──なかなか予想しづらいのは確かですよね。 いずれにしても、東京五輪は、技術の面で実験場になる可能性が高い。先進ITの、最先端の使い方のモデルケースになるというか。それをどれだけ吸収し、一般の生活や業務の場に持ち込んで役立てるような方法を見つけられるかが問われると肝に銘じています。

‘さらなる成長のためには、技術者もマーケットを知り、お客様の立場に立って次にどんな提案をすべきかを考えられるようにならなければなりません。’<“KEY PERSON”の愛用品>スケジュール管理はアナログが一番 モノには執着しないというが、ロンドン赴任から帰国する際に当時の部下から贈られたシステム手帳は例外。5年近く使い込んでいる愛用品だ。「スケジュール管理は一覧性、視認性に優れるアナログが一番」だという。
眼光紙背 ~取材を終えて~
もともとは富士通のSEで金融分野を担当、後にマーケティングにも携わり、さまざまな業務を経験したものの、社長就任の打診があったときは「プレッシャーを感じた」と打ち明ける。しかし、迷ったときに指針とするのは、バックボーンであるSE時代の経験だ。先輩から言われた「焦るな」という言葉が支えになった。「拙速に自分の目で見えたものだけ考えても仕方がない。焦らず、かつスピード感をもって事業を進める」と語る小島社長の意志は固い。
富士通の100%子会社ではなく、単独で上場していることもあってか、グループ内で存在感を高めることを強く意識している。「富士通が取りこぼしているところは必ずある。そこは独立色のある当社がやることで、グループのために貢献できるし、お客様にもお応えできる」と確信している。「組み込みとSIができる」という独自の武器を生かし、新たな価値を提供していく。(宙)
プロフィール
小島 基
小島 基(こじま はじめ)
1957年8月15日生まれ。1981年、東京理科大学理工学部を卒業し、富士通に入社。システム本部第一システム事業部ニュービジネス推進部長、マーケティング本部コーポレートブランド室長、第二バンキングソリューション事業本部プロジェクト統括部長、第二バンキングソリューション事業本部長代理、金融ソリューションビジネスグループSVP、金融ソリューション本部(現金融システム事業本部)保険証券ソリューション事業部長などを歴任。2013年6月より現職。
会社紹介
1963年、日産リースとして設立。75年に富士通が資本参加し、86年に現社名へ変更。システムインテグレーション、エンベデッドシステム、クラウドなどのサービスを軸に、ソフトウェアの開発やシステムの企画から運用・保守サービスの提供を行う。富士通の出資比率は56.4%で、東京証券取引所JASDAQ市場に上場している。2015年3月期の連結売上高は314億9800万円。従業員数は15年3月31日現在で1877人。