イノベーションを牽引する存在に
──先行するクラウドベンダーの実績あるパートナーとの協業を進めるという戦略も発表されました。これまで御社は、市場が成熟しかけたころに既存の顧客基盤や資金力などをフル活用して一気にトップを奪取する、徹底したフォロワー戦略で勝ってきた印象です。クラウドも同じでしょうか。 これまでの当社のビジネスにそうした側面があったことは確かですが、クラウドは違います。現時点でも、必ずしも後追いだとは思っていませんし、開発投資もキャッチアップ型から提案型にウエイトが移ってきています。サティア・ナデラが新たにCEOに就任してから、すべてをWindowsのプラットフォームのなかで何とかしようという、世界の流れを止めようとするようなことはやめて、むしろ世の中の変革を加速させる立場に変わったんです。彼の嗅覚や情熱はすごいですよ。Windows 10は最高のプラットフォームだと自負していますが、これもクロスプラットフォームの世界が前提の技術です。個人的にも、これからのマイクロソフトの技術開発は非常に楽しみです。
──クラウドではイノベーションを引っ張る立場になると。従来とは違う方法論を採るわけですが、それでも勝ち続けられますか。 もちろん。ただ、何度もいいますが、クラウドで「勝つ」というのは、モノが売れるということではなく、お客様に当社の技術・製品を使っていただいて、価値を感じてもらうという世界を広げていくことです。その結果として、ビジネスでナンバーワンになる。また、仮に勝ったとして、その後もチャレンジャー精神を維持することが大事だと思っています。
──グローバルベンダーは、「日本企業の競争力を高めるためのITを提案する」と、みんな口にしますが、日本のIT業界にそれが可能でしょうか。 クラウドがコスト削減の手段だと考えているお客様と、クラウドにあるデータをどう活用してビジネスにインパクトを出すかを考えているお客様では、3年後に天地の差が出てくると思います。AI、IoTなどいろいろなキーワードがありますが、そのデータをどのように生かすかというメンタリティがもてないと、確かに、日本企業が海外企業に差をつけられるという懸念はあります。当社に対しては、そういう市場をつくっていくことへの期待も寄せていただいていますので、しっかり責任感をもってやらなければなりません。
SIerなど、デリバリするパートナーの力も重要です。彼らが、自らのビジネスを変革するという覚悟のうえで攻めの提案ができれば、お客様のビジネスの成長を強力に支援できるでしょう。逆に、変化を受け入れるのを先延ばししようとしているパートナーと組んでいるお客様は、苦しくなる。そうした状況もあってか、日本でも、ITのファンクションを自社内に戻そうという動きが出てきています。パートナーにとっても、さまざまな「気づき」が求められているのではないでしょうか。

‘パートナーにわれわれのテクノロジーをどうエンベデッドして使っていただくかが重要。そのポテンシャルは従来のビジネスモデルと比べてもケタ違いです。’<“KEY PERSON”の愛用品>Surfaceでペーパーレスに 自社のタブレット端末「Surface」をクラウドストレージの「OneDrive」と合わせて活用することで、ペーパーレス化を飛躍的に進めた。「自分のキャビネットには、名刺とキャンディと歯ブラシくらいしか入っていない」と満足げに笑う。
プロフィール
平野 拓也
平野 拓也(ひらの たくや)
1970年生まれ。北海道出身。1995年、米国ブリガムヤング大学を卒業後、兼松の米国法人Kanematsu USAに入社。98年、Arbor Software(Hyperion SoftwareとのM&A後、Hyperion Solutionsに社名変更)に移籍。2001年、ハイペリオン日本法人の社長に就任。05年、マイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社し、執行役常務エンタープライズサービス担当、同エンタープライズビジネス担当などを経て、11年からは東欧諸国や新興国を中心に25か国を統括するマルチカントリーゼネラルマネージャー。14年7月、日本マイクロソフトに復帰し、執行役専務マーケティング&オペレーションズ担当、代表執行役副社長を経て、7月1日より現職。
会社紹介
1986年設立で従業員は7月1日現在で2147人。支店は全国6地域に置いている。近年、クラウドサービスが好調で、昨年12月に関東、関西の2か所に国内データセンターを開設し、成長がさらに加速している。主力商材であるAzureやOffice 365は、現在、売上高が前年同期比200%に達する水準で伸びているとみられる。