レノボはグローバル企業だが、レノボ・ジャパンの立ち位置は一般的な外資系企業とは異なる。本社の方針を国内に展開するだけでなく、レノボ・ジャパン独自の戦略を確立し、グローバルへと展開することもある。IBM時代から続く研究所やNECの工場が国内にあるため、レノボ・ジャパンの強い立場を支えていると考えがちだが、どうやらレノボ本社によるグローバルの方針らしい。2015年4月、レノボ・ジャパンとNECパーソナルコンピュータの社長に就任した留目真伸氏が生き生きと日本の未来を語るのも、レノボの企業文化があってこそに違いない。
レノボもPC業界も変わるべきタイミング
──社長に就任されてから半年を過ぎました。社長業について、どのような感想をおもちですか。 思ったよりも忙しい。ただ、楽しくやっています。やはり、なるべくしてなったというタイミングで就任できたかなと。
──「なるべくして」とは、どういうことですか。 レノボという会社もそうですが、PC業界そのものも変わっていくべきタイミングじゃないですか。その意味で、ここは私がやらなければいけないタイミングなんだと。
レノボは、IBMのPC、それからNECのPCの流れをくむ、いわゆるPCの元締めみたいな会社です。当初のPCは、スパコンみたいな大きなコンピュータしかなかったところを、個人や仕事で手軽に使えるようにすることで大当たりしました。
ところが、いつしかテクノロジーの進化のロードマップに従って、ただ単にアップデートして販売するだけの業界になってしまいました。本来のミッションは、パーソナルコンピュータではなく、パーソナルコンピューティングを提供することです。
そう思うのは、日常生活やビジネスシーンでコンピューティングパワーを活用できていないからです。宅内にいるときに、無意識にテレビをつけることがあっても、PCはつけない。仕事でも必要なときにExcelを使う程度ではないでしょうか。要は、パーソナルコンピュータが普及していても、パーソナルコンピューティングって、まったく普及していないって思うわけです。
──それはPCだけではなくて、スマートフォンやタブレット端末も含むという考えでいいですか。てっきり、すべてPCでという話かと。 いやいや、PCだけの話ではありません。今はテレビやスマートフォン、PCなどがバラバラで、一貫したホームコンピューティング、あるはモバイルソリューションになっていないんですよ。
自動車は今、すごくインテリジェントになってきているじゃないですか。ところが、車よりも、家にいる時間のほうが圧倒的に長い。ホームコンピューティングについて、もっと真剣に考えるべきなんです。
ビジネスにおいても、コンピューティングパワーがほとんど活用されていません。例えば、基幹システムでは、データを入力して、清算につなげる。本当に原始的なところしかシステムになっていないんですよね。もう何十年も進化していない。
──それらにおいて、御社はどのような役割を担うのですか。 われわれは、基本的にはハードウェアのメーカーです。コンピューティングパワーが搭載されているシステム、デバイスに取り組む会社というポジションは変わらないと思うんです。ただ、「共創」という言葉を掲げているのですが、今、お話ししたような宅内のシナリオ、宅外のシナリオ、オフィスのシナリオにおいて、ゴールを設定し、それに至るプロセスを多くの企業と一緒に取り組んでいきます。企業規模の大小を問わず、スタートアップも含めて、一緒に進めていくことをやっていきたいですね。
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