ビッグデータとAIの本質は共通
──15年度はSDNやビッグデータの分野で戦略的に投資を上積みされたほか、IoTやAIで人員を増強するなど、トレンドの技術に対して積極的に取り組んでいく姿勢が印象的でした。 数年前「クラウド」の活用が叫ばれ、それから「ビッグデータ」といわれるようになり、そして今「AI」といわれていますが、われわれの観点でいうと、ICTを使ってどうやって価値を提供するかという点では、本質的には共通しています。ただ、クラウドのときは、ITを使って事業コストを下げることに力が入っていましたが、ビッグデータ以降は、クラウドもデータもうまく使って、どうやって新しい価値をつくりあげようかというように変わっている。では、AIでは何が変わるか。それは、判断が入ってくることなんですね。「知識」の領域まではビッグデータなどの分析でかなり近づける。では、知識の上の「知性」、人の判断に示唆を与えられる高度な知に近づくにはどうすればいいか、これを今みんな一生懸命考えている。
──「判断」というのは、人の代わりにAIがいろいろな決定をしていくということですか。 AIを利用した判断には、三つの種類があると考えています。まず、工場のオペレーションの効率を上げるといった、決まった動きのなかで状況を理解することなら、AIだけで判断を完結することができます。二つ目が、機械と人間のハイブリッドの判断。例えば医療分野です。データの分析によって、この患者さんにはこういう治療や薬がいいのではないか、というところまではみえますが、最後に判断するのは医師、人間というパターンです。そして三つ目が、人間の判断をAIでできるかどうか。これはけっこう難しい。なぜなら、倫理観をどうやって入れるかという問題があるからです。倫理観は人それぞれで共通ではないし、宗教によって食べてはいけないものがあったりもする。みなさんあまり意識していないかもしれませんが、車の自動運転でも倫理観が必要なんですよ。目の前に対向車が来たとき、右によけても左によけても人や物を絶対に傷つけるときどうするか。自動運転にも限界があるわけです。なので、私は判断はハイブリッドでやるべきだと思っています。
──AIは人間を置き換えられるのかという問いはこの分野の究極的なテーマですが、今のタイミングで、AIが役に立つということはどのように説明されますか。 できることはたくさんあると思います。例えば、IoTも結局はAIだと思います。ビッグデータは過去のデータを分析して、過去の中から将来を見越す数式が成り立たないかを探る技術でしたが、IoTはデータをリアルタイムで集めて相関関係がとれる。そうすると、「現在のちょっと先」がかなり高い精度で予知できる。何らかの予知ができると、故障や事故の予防ができます。人間はぼんやりものをみて、ぼんやりと判断をするのに対し、IoTとAIを使えば状況をより正確に理解し、より正確な予知ができる。そういう意味だと、社会インフラ領域におけるICTの価値はものすごく高い。危険予知や安全性確保のためにはAIが絶対に必要ということがおわかりいただけると思います。
──今まで、ここまでNECがAIに入れ込んでいたというイメージはなかったのですが、この時期にブームになりそうだと見込んで用意されていたのでしょうか。 時期まで予測していたわけではないですが、ビッグデータに関してはこれまでもかなり研究開発を行っていて、AIはその延長線上なんですね。違いはどれだけリアルタイム性を持つかということ。ビッグデータが進化して、リアルタイムに判断できるかというところがみえてきた。それをAIと呼んでいるということです。
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