40年越しで実現する「C&C」コンセプト
──IoTやAIはまだまだ各社が可能性を模索中という段階にみえますが、業績に反映される形での成果は得られるのでしょうか。 それは、あるタイミングで急に出てくると思います。東京五輪・パラリンピックの開催や、ロボットや自動運転をリモート制御するための5G(第5世代移動通信)の世界もあり、ICTがやるべき仕事は非常に多い。早い段階で結果が出てくると思います。
──ブームの後には幻滅期が訪れることが多いわけですが、今後AIは“バズワード”の域を超えて、本当にビジネスになるのでしょうか。 1950年代と80年代にもAIブームがあり、今は第三次のAIブームだと思います。ただ、過去2回のブームでは「概念としては可能かもね」という世界だったのが、今は本当に実現できるようになってきた。例えば、われわれの技術はほぼリアルタイムで特定の人物の顔を認識できます。繰り返しになりますが、リアルタイム性の獲得によって、AIがようやく価値をもち始めたということなんです。もう一つは、AIがその力を発揮できる領域が出てきたこと。最近はロボットがよく話題に上がりますが、ロボットもAIですよね。またSDNでも、AIがあると判断を自動化し、音声に帯域をこれだけ割り当て、データにこれだけ割り当てるというのを、瞬間的にバサッと変えることができる。あるいは、従来はハードウェア同士をケーブルでつながないと処理ができなかったデータを、ネットワークをリアルタイムに組み替えて、別の場所にあるリソースに飛ばして扱うことができる。
──NECの本業の一つであるネットワークも、AIによる恩恵は大きいと。 1977年に「C&C」(Computer&Communication)という理念を小林(宏治会長、当時)が提唱し、NECはずっとそれを言い続けてきたけれど、結局、本当の意味でC&Cが一体になり始めたのはここ2~3年です。クラウドといわれるようになった時代も、まだコンピュータと通信は少し離れていた。今はコンピュータとネットワークが完全に一体化し始めている。こうなるとAIの意味合いがまた出てくるということです。さまざまなICTは、ほとんどがAIに行き着くのではないでしょうか。後はお客様がいつ投資するか、その判断にかかっているという段階だという気がしますね。われわれにとっては非常にいい追い風が吹いていると思っています。

‘コンピュータとネットワークが完全に一体化し始めている。ICTは、ほとんどがAIに行き着く。’<“KEY PERSON”の愛用品>備忘録にはアナログの機動力 いつも持ち歩く筆記用具。ペンは万年筆かと思いきや、実用性重視でフェルトのペン芯を選んでいるという。レザーカバーに入れたメモパッドは手のひらサイズで、立ったままでも思いついたことをすぐに書き留められる。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「新年おめでたい時期に掲載する記事なので、少し未来を感じさせる話などお聞かせいただけませんか」といった口上でAIについて聞くつもりだったが、そのもくろみはあっさり外れてしまった。こちらから水を向けるまでもなく、遠藤社長の話がすべてAIに帰着するのである。社会インフラ事業への転換フェーズをNECが乗り越え、人とICTの協調で社会に価値を提供するというビジョンの実現に向けて走り出したことを確かに感じさせる。
AI分野でのライバルは「IBMの『Watson』ですか」と聞くと「十分対抗できる。当社のほうが高い技術をもっていると思う。ただ、Watsonのようなわかりやすい名前がないのは課題」との答え。編集部からは「Dr. Endo」を提案したが、遠藤社長の反応はいま一つ。AIなら、どんな名前が売れると予測してくれるだろうか。(螺)
プロフィール
遠藤 信博
遠藤 信博(えんどう のぶひろ)
1953年生まれ。81年3月、東京工業大学大学院理工学研究科博士課程修了、工学博士。同年4月にNECに入社。2003年4月にモバイルワイヤレス事業部長に就任し、マイクロ波通信装置「パソリンク」の事業責任者として新興国市場を開拓、世界トップシェア製品に成長させる。06年4月、執行役員兼モバイルネットワーク事業本部長、09年4月、執行役員常務に就任。同年6月、取締役執行役員常務を経て、10年4月より現職。
会社紹介
1899年創立の電機メーカーで、正式社名は日本電気(にっぽんでんき)。パブリック、エンタープライズ、テレコムキャリア、システムプラットフォームの4領域で事業を行っており、通信とITの両分野に強みをもつ。2015年3月期の連結売上高は2兆9355億円。従業員は9万8882人(15年3月末時点)。連結子会社は232社(同)。