仙台駅から北北西へ車で約40分。グレープシティの本社は、大手デベロッパーが手がけた高級住宅地に隣接する。広い土地をぜいたくに使ったオフィスは、郊外に本社を置く欧米企業のようだ。人材採用を考慮すると、都市部に本社を構えがちだが、馬場直行社長は、「東京への本社移転は考えたことがない」という。理由は、創業時からグローバルカンパニーを目指しているからだ。「世界をみているから、本社の場所は関係ない」。IT業界ではソフトウェア開発支援ツールのイメージが強い同社だが、最近では英語教育事業のグローバル展開も軌道に乗りつつある。
グローバル企業を志向
──社長に就任されたのが2005年4月ですから、もう10年以上になるのですね。グレープシティに入社される前は、学校にお勤めされていたそうですが。 もともとは、学校の先生になりたかったのです。子どもが好きでしたから。それはかないませんでしたが、学校には就職できて、経理事務を担当していました。だから、IT業界とは無縁の世界にいたのです。
グレープシティへの転職は、勤務先で当社の学校向け経理システムの「LeySer」を使っていたのがきっかけです。東京で営業を担当してほしいと誘っていただきまして、おもしろそうだなと。
──経理担当と営業担当では、ずいぶんと環境が変わったのではないですか。 営業は大変でした。学校では内勤でしたから、お客様にモノを売ることをやった経験がありませんから。ただ、お客様はシステムだけでなく、実務のノウハウも求めていました。私には実務経験があったので、なんとかやってきたという感じです。苦労しただけに、契約ができたときは大きな喜びとなりましたね。
──グレープシティに転職されたのは、いつ頃ですか。 92年です。東京での営業は5年ほど務めましたが、経理担当として本社に行くことになりまして、それからはずっと仙台です。
──本社が仙台にあると、不便だと感じることはありませんか。例えば、企業が成長する過程で、人材確保のために都心に本社を移転するのは、よくあるケースです。 東京に本社を移転しようと考えたことはないですね。当社は、私が入社する前からグローバル企業を志向しています。世界をみていますから、本社が東京か仙台かは意識していません。優秀な人材は東北でも十分に確保できますし、Iターンで当社を希望する人も増えました。オフィスは郊外にありますが、働く環境はとてもいいと思います。
私は流れに乗るのではなく、「流れをつくれ」と社内で常に言っています。そのためには、お客様のリクエストに応えるのではなく、「これほしかった」といってもらえる商品や機能を提供しなければならない。流れに乗るだけでは、競合企業に勝てません。ナンバーワンになるには、流れを自らつくる必要があるのです。
ただ、それには“考える余裕”が必要です。オフィス環境も、アイデアを生む設備の一つ。環境は大事です。
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