今年創業40周年を迎える米CAテクノロジーズ。現代を「アプリケーション・エコノミー」の時代と定義し、ビジネスを勝ち抜くソフトウェアを開発・運用するためのソリューションを主力事業としている。一方、ITインフラやアプリケーション自体を販売しているわけではないため、何を提供してくれるベンダーなのかがみえにくかったのではないだろうか。この春、日本法人の新たなトップに就いた反町浩一郎社長に、「CAとは何の会社なのか」をたずねた。
中立のユニークな立ち位置
──ここ数年で製品ポートフォリオも大きく変わり、「CAとはいったい何の会社なのか」を理解するのが難しく感じているのですが、今のCAを一言で表していただけないでしょうか。 われわれが今標榜しているのは、CAは「デジタルトランスフォーメーションのベストサポーター」になるということです。言い換えれば「ITを使ったビジネスの変革をお手伝いしていく」。それが今の私たちの事業の中心です。
──今、ほとんどの大手ITベンダーが何らかの形で「デジタルトランスフォーメーション」を戦略に掲げています。そのなかで、CAの独自性というのはどこにあるのでしょうか。 CAは、企画、開発、運用の3フェーズすべてを支援するソリューションをもっており、なおかつ技術的に中立の立場にある、唯一の独立系ソフトウェアベンダーであると考えています。多くの大手ITベンダーは、自社のハードウェアをもっていてそれに最適化されたソフトウェアを提供していたり、自社のパッケージソフトやクラウドサービスなどを販売するための事業を中心としています。それに対して、われわれはソフトウェア企業ですが、アプリケーションやSaaSを提供するベンダーではありません。マルチベンダー、マルチプラットフォームに対応した、純粋にニュートラルな立場で、デジタル化をサポートできるという点で、非常におもしろい立ち位置にいる企業だと思っています。

──現在、事業の三本柱が「アジャイル管理」「DevOps」「セキュリティ」だとうかがっていますが、デジタルトランスフォーメーションとはどのように関係してくるのでしょうか。 アプリケーションは、各企業がもっている英知と言い換えることができますが、デジタル時代のビジネスにおいては三つのポイントがあると考えています。まず、これはスピードの勝負であるということです。アプリケーションを市場に投入するまでの時間を、いかに短縮できるか。それと同時に、アプリケーションをいかにセキュアに展開するかという課題があります。そして、将来のための柔軟性・拡張性をもっているかも重要です。もちろん、ビジネスの英知そのものも重要ですが、同じかそれ以上に、スピード、セキュリティ、拡張性が勝負のカギを握る時代です。われわれがアジャイル、DevOps、セキュリティの3分野に投資をしているのは、企業の英知を最速で市場投入するための道具をご提供したいと考えているからなのです。 ページ数:1/1 キャプション:
デジタル化の波は中堅にも
──日本では、ITの大部分を外部のSIerなどにアウトソーシングしている企業がむしろ主流といわれることもありますが、デジタルトランスフォーメーションのサポートというサービスに需要はあるのでしょうか。 日本市場では過去2年間で、新規ライセンスの販売が30%以上伸びています。成長市場であることは間違いないです。今年2月、外部の調査機関に依頼して行ったDevOpsに関する調査では、日本では54%の企業が何らかの形でDevOpsの採用を進めているという高い結果が出ており、日本でもわれわれのビジネスに対するニーズは高いと考えています。
──そのような先進的な動きは、大企業に限った動きという可能性はありませんか。 欧米と比較すると、全体的にみて日本企業ではビジネスのデジタル化に1~2年の遅れがあるのは確かだと思いますが、大企業だけのトレンドとは考えていません。むしろ、今ポテンシャルがあるのは、大企業に加えて中堅企業です。例えば、ある特定の製品に強みをもっているが、市場への露出機会が少なく、販路も限られているといった企業は、デジタル化によって売り上げを大きく伸ばせる可能性があります。また、今まさに多くの中堅企業が海外展開を検討されています。この領域でCAがお手伝いできることは非常に多いと考えています。
──先ほど、ここ2年で日本市場での販売が大きく伸びたというお話がありましたが、その理由は。 最大の理由は、パートナービジネスが伸びていることにあります。日本は世界のなかでも歴史的にパートナー様との関係が強かった市場ですが、今CA自体がグローバルでパートナービジネスによりフォーカスしようとしています。その意味では、日本は現在のCA全体の戦略を先取りしていた格好なので、それらがマッチして大きく伸びたというところです。
パートナー網が回り始めた
──社長に就任されて初年度の戦略を教えてください。 まず、歴史的にわれわれとの関係が深かった、金融や通信事業者などの重要な「フォーカス・カスタマ」の方々には、各社様の固有のビジネスに即した直接の営業活動を通じて、より高度なサービスを提供していきたいと考えています。ただ、すべてのお客様に対してこのような取り組みができるわけではありませんので、フォーカス・カスタマの数は従来よりも絞り込んでいく形になります。それ以外のお客様はすべて、パートナー様との協業による間接販売モデルをとる考えです。
──逆にいうと、パートナー経由でのビジネス領域がさらに拡大するということですね。 国内での新規ライセンスの売り上げに関しては、パートナー様経由の販売がこの3年で40%以上伸びており、間接販売の拡大が今後のビジネス成長の柱になると確信しています。今後はパートナー様との案件づくりを強化したい。すでに、CA自身としては過去まったくおつき合いのなかったお客様に対して、パートナー様独自の営業活動を通じて販売いただけるケースも出てきています。
──パートナー網がエコシステム、つまり本当の意味での“生態系”として回り始めた。 おっしゃる通りです。技術やノウハウの移転、サポートの強化、インセンティブモデルの見直しなどを通じて、このような動きを加速したいと考えています。また、われわれはアジャイルやDevOpsなど、まさにシステム開発をサポートする製品のベンダーですので、新規パートナーの獲得に向けては、とくにSIer各社様にお声をおかけしたいと考えています。ユーザー企業のデジタル化を支援しつつ、工数の削減やプロジェクトの利益率向上などを実現できる、SIer様ご自身にも非常に有益なソリューションのご提供が可能です。
CAのなかは想像以上に変革している
──長年IT業界をみてこられて、今のタイミングで新天地としてCAを選ばれたのはなぜですか。 グローバルの大手ITベンダーは、顧客やパートナーを自社の戦略のなかに組み込んでいくようなところがありますが、最初に申し上げたように、CAの立ち位置はあくまで中立です。そのような独自のポジションに魅力を感じ、また日本のITを発展させるために貢献できると思ったのが、CAを選んだ理由です。日本の企業はすでにいろんな英知をもっているし、アイデアも技術力もあると思っています。それらをいかに世の中に出していくか。多くの企業の方々と一緒になって、ITを使ってその企業のよさを外に伝えていく。これが今一番やりたいことです。
──ただ、CAは歴史のある企業だけに、昔からIT業界にいる人ほど、今でも「メインフレームの運用管理とかの会社でしょ」と思われているような節はありませんか。 CAはITの世界では“古豪”といっていい存在だと思います。しかし、古豪にはいい点も悪い点もあり、どうしても古いイメージがついてしまっているところがあります。もちろんメインフレームも、現在でも重要な事業ですが、私自身が入社前に想像していた以上に、CAのなかでは人材の配置も含めて、すでに大部分が新しい領域のビジネスに軸足を移しています。おそらく多くの方々が思っていらっしゃる以上に、なかではデジタルトランスフォーメーションに向けて進んでいます。「すでにCAは新しい方向に向かっています」ということを日本の方々にお伝えしていくのも、私の重要な役割ですね。

‘アプリケーションは企業の英知 最速で市場に投入することが重要’
<“KEY PERSON”の愛用品>受け継がれる時の流れ 祖父から父へ、そして自分へと受け継いだ自動巻の腕時計を毎日使っている。定期的にオーバーホールを行っており、製造約50年を経てもほぼ正確という。反町氏が4月に日本CA新社長に就任し、時計たちも“経営者の時”を刻み始めた。

眼光紙背 ~取材を終えて~
デジタルトランスフォーメーションの話題では、ITを使って既存の市場を破壊したプレイヤーとして、必ずといっていいほど「Uber」や「Airbnb」が引き合いに出される。そして「日本企業にも彼らのような革新的アイデアが必要」といった趣旨の論調が続くことも多い。
それに対して反町社長は、デジタルトランスフォーメーションの必要性を強く訴えながらも、アイデアや技術面でのイノベーションはそれほど強く求めていない。むしろ、すぐれた知見はすでに日本企業のなかにあり、後はいかにそれを先んじて市場に投入していくか、という考えをもっているようだ。
ビジネスでは、競合に先を越され「うちも同じことを考えていたのに」と地団駄を踏むシーンも少なくない。そんな後悔をしなくてすむ体制を確立することが、デジタルトランスフォーメーションの本質かもしれない。(螺)
プロフィール
反町 浩一郎
反町 浩一郎(そりまち こういちろう)
東京都出身。1990年、日産自動車入社。99年、マイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社し、2008年に同社業務執行役員に就任し、文教営業本部長兼ビジネス推進本部長、コーポレート営業統括本部長を歴任。13年、SAPジャパンに入社、パートナービジネス統括バイスプレジデント、15年、同社ゼネラルビジネス部門バイスプレジデントに就任。今年1月、日本CAに入社しCOOに就任、4月より現職。
会社紹介
「Computer Associates」として1976年に創業したソフトウェア企業で、メインフレーム、開発、運用管理などの分野で長年の実績をもつ。2010年に社名を現在の「CA Technologies」に変更。本社は米ニューヨーク州。従業員数は1万2700人(2014年3月現在)で、世界45か国でビジネスを展開する。2015年3月期の売り上げは42億6200万ドル。日本法人の日本CAは1997年設立。