市場はまだまだ伸びしろがある
──成長の核になる、とくに伸びしろが大きいビジネスは何だと考えておられますか。 いわゆるサービスの部分を伸ばしていくことが一番のポイントだと思っています。ハードに依拠したビジネスはいつまでも続かないけれども、ハードのビジネスが完全になくなるわけでもない。お客様に必要とされる商材のラインアップを維持しながらも、いかにクラウドをはじめとするサービスオリエンテッドなビジネスを拡大していくか、そしてパートナーやお客様をそちらの方向に誘導していくかが重要です。
営業のインセンティブ制度なども、そうした戦略の変化に合わせて改めてはいるのですが、人間ですから、今まで売ってきたもののほうが売りやすいというのがどうしてもある。でも、本来はクラウドにしても、中堅・中小企業こそ、より大きなメリットを享受できるはずですよね。この点でも、お客様にとっての利益を考えてITを提案できる人材を増やすための教育への投資が必要なんです。
──国内の中堅・中小企業のIT投資は伸びていくでしょうか。 お客様と直接お目にかかってお話ししても、十分に成長の余地がある市場だと感じます。1990年代の半ば、まだ課長になりたての頃に、富士通グループの人事関連の手続きをシステム化するというミッションを担当したことがあります。日本はいまでも書類文化ですが、当時、人事だけでも帳票が450くらいあって、社長だった関澤義さんに「何を前近代的なことをやっているんだ」といわれて、システム化したのが富士通の人事システムのはじまりだったんです。まだ当時の富士通のシステムのレベルまでも行っていない企業は相当数あって、企業規模の問題もあるにせよ、日本の書類手続き中心の文化を泥臭く探っていけば、IT活用で中堅・中小企業にもメリットが出てくるところはまだまだあると思っています。
──具体的な注力ポイントは。 ヘルスケア市場は非常に活力があるという印象です。保育などもそうですね。いままでIT化が遅れていて、便利になったことがすぐに実感していただける分野から攻めていくのは一つの方法でしょう。こうした分野は中堅・中小企業が多いですし、一社への提案だけでなく、地域的なまとまりをもつ提案、例えば医療、介護、育児の地域連携のような包括的な提案にもつなげていくことができるはずです。ヘルスケアは富士通本体が強い分野でもありますから、グループとしての総合力も強みになります。
また、中堅・中小企業は、ITを活用しているとしても基幹系の範囲にとどまっていて、いわゆる「攻めのIT投資」には至っていないお客様が圧倒的に多い。経営マネジメントにデータを活用していくとか、お客様のビジネスそのものの成長に貢献できる先進的なソリューションを中堅・中小企業に現実的なコストで提供するのも、果たすべき大きな役割だと考えています。それを可能にするキーワードもクラウドですから、やはり当社の成長のためにも、ビジネスモデルの変革は必要なことなんです。

営業、SI、自社商材の開発・販売、富士通パートナーの支援といった機能が
密接に連携して、お客様に深く入り込んだ提案ができるようになっています
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