学校教育ICTの専業ベンダーとして20年近い歴史をもつチエル。前身である旺文社デジタルインスティテュートとアルプス システム インテグレーション(ALSI)の教育事業部門の統合による「チエル」設立から10年が経つ。今年3月、東京証券取引所JASDAQに上場。教育ICT市場にとって大きなターニングポイントとなる2020年へ向け、弾みをつけようとしている。川居睦社長に市場動向と今後の方向をたずねた。
営業体制を強化し地域に入り込む
──今年3月、JASDAQに上場されました。川居社長は、前身である旺文社デジタルインスティテュートの頃から長くチエルにいらっしゃいますが、上場に対する思いはいかがでしょう。 ご存じのように、政府は2020年までに小・中学校の生徒に「一人1台」のタブレット端末を整備することを目標に掲げています。また、同年には、学習指導要領の改訂が小学校から順次始まっていきます。このことはだいたいわかっていたので、4年ほど前から上場の準備を始めていました。今後、当社が学校教育ICT市場一本で事業を展開していくには、市場環境が良好なこの時期しかないと思っていました。
──20年に向けて、市場が拡大していくとみられているようですが、御社の事業環境はどうなるとみていますか。 タブレット端末でいうと、昨年度の教育用での導入は15万台くらいです。では、一人1台が実現したらどうなるか。生徒数が1330万人ですので1330万台です。そう考えると、今はまだ1%程度しか導入されていません。ですから今後、小・中学校は確実に伸びていくでしょう。
当社の現状の売上比率は、高校・大学が7割で、小・中学校が3割です。高校・大学のほうが高いのは、当社の営業が全国に20人ほどしかいないためです。
全国には1800ほどの自治体がありますから、チャネルとの関係性をもっとしっかり構築していかないと、20人程度の営業では取りきれない。それに加え、タブレット端末を授業でどう使っていくのか、学習効果がどう出てくるのかというところまで深く入り込まないと、小・中学校の市場でなかなか普及するものではありません。今は高校・大学が7割くらいですが、少しずつ小・中学校も伸ばしていこうとしています。
──御社の営業人員が少ないことについては、どのような対策を講じるのですか。 今、営業所が沖縄、福岡、大阪、名古屋、東京、仙台、札幌の7拠点あります。一方で、四国や中国地方、北陸や南九州などが空白地域となっています。小・中学校は基本的に市町村の管轄で入札制度があり、入札資格は地元業者が優先なんです。ですから、その空白地域にちゃんと人を配置していかないと、地元のディーラーさんとのリレーションも構築できません。また、地域ごとに教育ICT事情は大きく異なりますから、各地域に拠点をつくっていくということが重要だと考えています。
──とすると、営業の人員を増やしていくのでしょうか。 そうですね。実際に、昨年から四国や北関東に一人常駐させています。今後はそれを営業所にするなどして、体制を整えていきたいと思っています。
また、20年には小学校で英語が教科化されます。そうなると、小学校の教員が英語を教えないといけなくなります。先生方も英語を勉強しないといけない。これについては文部科学省から方針が出ており、とくに中学・高校の英語の先生は、英検準1級以上、TOEIC730点以上という指標が示されています。これに対しては、われわれのeラーニング商材がビジネスチャンスになる。ここはやはり狙っていきたいですね。

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