汎用化、横展開を常に頭に入れる
──ずばり、石曾根さんがこれから築き上げる新しい収益モデルとはなんでしょう。 SRAが将来にわたって成長できるビジネスモデルは、まだこれから考えるわけですので、残念ながら、今ここでお答えすることはできません。ただ、SIerは、顧客の業務をシステム化する仕事をしてますよね。システム化するためにソフトを開発したり、運用を請け負ったりするなかで、その顧客に特化した仕事をしてしまうと、一過性の売り上げで終わってしまうんです。特定顧客の環境に閉じた技術をいくら蓄積しても、他へ応用できず、特定顧客の仕事が終わったら、そこで得た技術も消えてしまう。これではダメで、できる限り技術を汎用化していく、横展開しやすい技術を蓄積していくことが「SIerにとって重要な技術」になるわけですよ。先の知財も、技術の汎用化、横展開していくなかで培ってきたものも少なくありません。
──今後も、知財をテコに成長を続けられると。 もちろん、知財化は当社の基本戦略ではありますが、今後は顧客の売り上げや利益を伸ばすことにより一層力を注ぎたいですね。例えば、IoT/ビッグデータやAI(人工知能)などの技術トレンド一つを挙げても、顧客にとってみれば、別にIoTがやりたいのでなく、自身のビジネスを成長させて、稼ぎたいわけです。だからSIerはもっと顧客のビジネスに寄り添って、オープン・イノベーションや各種の実証実験を通じて、顧客のデジタル・トランスフォーメーション(ITを活用したビジネス革新)を実現していかなきゃならない。もちろん、特定顧客のビジネスに閉じた技術で終わらせるのではなく、知財化して当社の成長にもつなげていきます。
──「技術」や「収益化」への強いこだわりを感じるのですが、石曾根さんご自身、過去にそうさせる体験や失敗経験があるのでしょうか。 そうですね。90年前後だったと思うのですが、ソニーのUNIX系のワークステーション「NEWS(ニューズ)」の開発に協力したことがありました。当時のUNIXはオフコン系のOSに比べて日本語処理が弱かったのです。そこで日本語を入力するためのソフトをつくり、フリーソフトとして公開しました。あの時はオープンソースソフトの概念もなく、私も含めて商売がうまくなくてね。当時、最先端分野だったUNIXワークステーションの開発に参画できたというのに、その後のビジネスにつなげられなかったのは、今でも内心忸怩たる思いがあります。
その後は、ソフト開発をするたびに、その後の汎用化、横展開を常に頭に入れるようになりました。OSSの「PostgreSQL」をいじっていて、ふとしたことがきっかけでメールアーカイブソフト「MailDepot」をつくって、企業の内部統制の強化や、証跡を残す用途に応用。ヒット商品に育てたこともあります。また、大学向けの学校事務ソフト「UniVision」も当社を代表する商材ですね。
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