──AUTOSARが注目を集めるのも、ADASや自動運転の時代を控え、ソフトの開発ボリュームが飛躍的に増大することが不可避であり、それを支えるプラットフォームが必要とされているからでしょうか。 その通りなのですが、実は、AUTOSARだけでADASや自動運転を成し遂げるのは少し難しいのですよ。まだ詳しくは言えないのですが、自動運転に欠かせない「ダイナミックマップ」の研究に本格的に着手しようと考えています。従来の静的な地図の上に、歩行者や他のクルマやオートバイといった動的な情報を紐づける仕組みで、このダイナミックマップとクルマを情報連携させる構想が進んでいます。工事中や気象、道路の冠水などの情報ももちろん紐づけられます。早ければ年内にも研究開発のコンソーシアムを立ち上げて、自動車関連のソフト産業の競争力向上に役立てていきたいですね。
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中学生のとき、NECのマイコン「TK-80」を手にした感動は忘れられない
<“KEY PERSON”の愛用品>出先でもITRONと一緒 いつも鞄に入れている開発用マイコンボード。小型だが、非常にパワフル&省電力。Linux OSをUSB給電で軽々と駆動できる。専門分野である組み込み用ITRON OSを入れて「外出先でも開発に没頭できる」とお気に入りだ。
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眼光紙背 ~取材を終えて~
「組み込みソフトのおもしろさは、命令(コマンド)一つ、ソースコード一行に至るまで、すべて手の内にあるところだ」と話す高田教授。大学院では国産OS「TRON」の産みの親である坂村健博士の研究室で薫陶を受けた。このTRONの研究によって「プラットフォームの大切さ」の認識がより強いものとなり、根っからの組み込みソフト好きの高田教授らしく、組み込み用「ITRON」の研究開発に没頭することになる。
「ITRON」は自動車や情報機器、航空宇宙などさまざまな制御OSとして活用されているが、こと自動車に関しては欧州発のAUTOSARが事実上の標準OSとなるなか、もはやITRONだけでは、あらがいきれないと判断。AUTOSAR研究へと踏みだし、国産AUTOSARの開発を担うAPTJの立ち上げへとつながった。「プラットフォームづくりが弱い国内のソフト産業をどうにかいい方向へ変えていきたい」と熱っぽく語る。(寶)
プロフィール
高田 広章
高田 広章(たかだ ひろあき)
1963年、京都市生まれ。86年、東京大学理学部情報科学科卒業。96年、博士(理学)、東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻。97年、豊橋技術科学大学情報工学系講師。01年、同学助教授。03年、名古屋大学大学院情報科学研究科教授。14年、同学未来社会創造機構教授。2015年、APTJ代表取締役会長(兼務)。TOPPERSプロジェクト会長(兼務)
会社紹介
名古屋大学発スタートアップ企業APTJを2015年10月に立ち上げ、自動車用OS(ソフトウェアプラットフォーム)であるAUTOSARの開発に参入。大学で教鞭を執るかたわら、出資会社のメンバーとともにAPTJのビジネスを軌道に乗せようとしている。