ソフトウェアの「買い取りモデル」をやめて、契約期間に応じた料金などを支払う「サブスクリプション」への移行を進めてきたオートデスク。2016年1月31日にスタンドアローン版、7月31日にスイート版の永久ライセンスの販売が終了し、サブスクリプションへの完全移行を果たした。これまでの永久ライセンス販売に慣れているパートナー企業の反応が気になるところだが、ユーザーのメリットを前面に出して説得している。その陣頭指揮を執るのが、4月に代表取締役に就任したマイケル・キング氏である。
モノづくりは大きな転換期にある
──ご経歴からすると、日本とは縁深い印象ですが、何かきっかけがあったのでしょうか。 アジアで仕事をする機会が多く、20年ほどになります。とりわけ日本との縁が深く、日本は延べ14年くらい。日本が長いのは、私が日本や日本人を好きだからかもしれません。日本人は非常に正直で、前向き。ものごとを達成しようとする意欲が強く、私自身も多くのことを学びました。
私がオートデスクの日本法人のトップを任された理由はいくつかあるのでしょうが、日本市場をよく知っているというのが大きいのではないかと。外資系企業は組織や戦略が変わりやすく、日本法人においても同様に展開しなければいけません。また、パートナー企業にも、当社の戦略や方針をきちんと理解してもらわなければいけない。そのため、日本法人のトップに就くには、日本でのキャリアが不可欠という判断だと思います。
オートデスクにとって日本は世界で2番目の市場ですし、今後も成長すると期待してますので、日本法人のトップというポジションはとてもやりがいがあります。
──オートデスクを取り巻くビジネス環境については、どのようにお考えですか。 オートデスクが担っているマーケットは、非常に大きな転換期を迎えています。例えば、クラウドやIoT、マルチデバイス。これらは便利な反面、モノづくりを複雑にしているのも事実です。そのため、当社の製品や技術の使われ方、またマーケットへのアプローチも大きく変わってきます。
なかでも、三つのインダストリに注力しています。一つめは製造業。製造業はまだ古い体質が残っていますが、クラウドやIoTによって大きく変わりつつあります。もう一つは、建設・土木。東京五輪の開催に向けた社会インフラ整備などの公共投資を追い風に、建設・土木の業界が大きく変わろうとしています。三つめが、メディア&エンタテインメントの業界です。最近流行のAR(拡張現実)やVR(仮想現実)では、さまざまな新しいデバイスが登場していますが、そのデバイスから見るARやVRの世界をつくる技術と要素を当社が提供しています。また、8月1日に三つのインダストリに向けて、三種類のスイートパッケージを発表しました。スイートパッケージでは、一つの工程ではなくて、すべてのワークフローが完結するということを実現するための製品になっています。
当社は各業界における動向をしっかり把握して、新しい環境にフィットする製品を提供していきます。そのためのビジョンが、「The Future of making Things」で、日本語では「創造の未来」になります。このビジョンのもと、まずは各業界に対して貢献する。次に人々の生活に貢献するということを通じて、当社を底上げしていくのが私の目標です。

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