日立システムズは、価値創出型のシステム領域へとビジネスの軸をシフトさせる。ユーザーの売り上げや利益を伸ばすことに直結するのは事業部門であり、この収益部門をIT活用によって変革する=デジタルトランスフォーメーションする領域には、「SIerとしてのビジネスを伸ばすのびしろが大きい」(北野昌宏社長)とみているからだ。従来型の基幹系システムと事業部門のデジタライゼーションを連携させることで、価値創出型のシステムビジネスへとつなげていく。
楽しみと心配ごとの両方がある
──北野さんは、長らく日立製作所のサーバー事業を担当されてきたとうかがっています。日立システムズはSIerであり、いわゆるモノづくりとは仕事の方向性が違う印象を受けますが、この8か月あまり経営トップとして舵取りをされてみて、どのような感触をおもちでしょうか。 私はメインフレームからサーバー、パソコンまで一通り経験し、その過程で、これら商品の一部が急速な勢いで、コモディティ化していく姿もみてきました。機器単体での価値は限られたものになっており、それをどう活用して価値を生みだしていくかにビジネスの軸が移っているのは、みなさんがご指摘しているとおりです。
もっといえば、ユーザー企業の情報システム部門が管理しているようなERP(基幹業務システム)から、IoT/ビッグデータ、AI(人工知能)といったツールでビジネスを変革するデジタルトランスフォーメーションの領域が、今後、一段と伸びるとみられています。ITの商談が電算室から現場へと軸足が移っているのではないでしょうか。
──北野さんからみた日立システムズはどのような会社でしょうか。 これから楽しみなところもあれば、ちょっと心配なところの両方がありますね。前者は後ほど話すとして、後者は「つくる」ところにこだわりをもちすぎてしまっている部分があることでしょうか。SIerにとってのモノづくりは、ソフトウェアやシステムを構築したりすることですが、私もモノづくりに長年取り組んできた人間ですので、つくる楽しさは人一倍わかっていますし、共感もできます。しかし、ビジネスの軸がITを道具として活用しつつ、新しい価値を創出する領域に移っていますので、ただつくるだけではビジネスとして成立しづらくなっているのですね。
ユーザーもIT製品を重視するのではなく、ビジネスをどう伸ばすかに関心が移っている。つまり、情報システム部門が管理する電算室ではなくて、売り上げや利益を稼ぐ事業部門が注目されている。ドラマのセリフではないですが、「ビジネスは現場で起こっている」のです。その事業部門がより多くの売り上げや利益を稼げるよう変革するITを提供するのが、われわれSIerに求められています。これを実践するには、ユーザーが現場でどのようなビジネスをやろうとしているのかを、よく聞き込んで、理解し、それを実現するようなITを提案する能力が大切です。そのうえで、必要であればソフトをつくったり、システムを構築する順番となるわけです。

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