NTTの複数の研究所との連携を強みとするNTTテクノクロスは、研究所で生まれた技術がベースの商材開発に力を入れている。なかでもNTTグループのAI「corevo(コレボ)」の要素技術を組み込んだ音声認識エンジンなど、音声や映像の領域では、将来が期待される技術をたくさん保有している。同社ではこうした技術の“原石”を磨き上げていくことで、競争力のある商品やサービスの創出に努める。NTTテクノクロスが発足して3か月。串間和彦社長に話を聞いた。
研究所と連携した商材開発を柱に
──旧NTTソフトウェアなどを再編してNTTテクノクロスとなって3か月が経ちました。まずは再編の狙いや経営方針について、改めてお話をいただけますでしょうか。
NTTテクノクロスの最大の特徴は、NTTグループの各研究所に非常に近い事業会社である点です。映像処理やAI(人工知能)領域のビジネスを強化するため、既存の事業会社を再編して4月1日付で発足したわけですが、研究所の研究成果をベースに、新しい商品を開発する。これを収益事業として育てていくことが、重要な経営方針の柱の一つと位置づけています。
──研究所との連携で、具体的にどのような商材を有望視しておられますか。
NTTは長年の電話事業で培った音声技術が非常にすぐれた会社ですので、まずはコンタクトセンターでの音声分析システム「ForeSight Voice Mining(フォーサイトボイスマイニング)」の例がよいかと思います。この製品は、オペレータと顧客との通話を分析して、顧客満足度を把握したり、オペレータ・コーチング支援などに活用していただいています。すでに比較的規模の大きい26を超えるセンターに納入済みで、いまみえている範囲だけでも同等数の引き合い、受注見込みがあるヒット商材です。
音声認識関連では、研究所が開発した最先端の音声認識エンジンで、AIのcorevoの要素技術を組み込んだ「SpeechRec」を、この6月にバージョンアップしています。日本語をはじめ10の言語を識別し、雑音が混じる環境下であっても精度よく認識できるなど、研究所の成果を実際の製品として落とし込んでいます。
──確かにNTTの歴史を考えると、音声技術は一日の長がありますね。では、映像技術のほうはどうでしょうか。
もちろん研究していますよ。イチオシなのが超高精細な映像の一部を切り出して、手元のスマートフォンに映し出す「パノラマ超エンジン」です。例えば、野球場全体を映し出すパノラマ映像がありますよね。バッターだけ拡大して見ようとすると、元のパノラマ映像をただ単純に拡大しては粗くなるだけです。そこで同エンジンでは、拡大したところだけ映像転送のビットレートをリアルタイムで上げて、どれだけ拡大しても高精細な映像を損なわないようにしています。
舞台やコンサートでも応用できます。例えば、9人いるメンバーのうち、ひいきの人を手元のスマートフォンで拡大して、追い続けることが可能になります。超高性能デジタル・オペラグラスのような使い方ですね。いま、商品化に向けて詰めの開発を進めており、今年度中には販売にこぎ着けたいと思っています。
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