人材不足の解決に必要な連携
──SIAの取り組みで目指すものは何でしょうか。
セキュリティはそれぞれの製品で対策をしますけれども、実は一番問題になっているのは、セキュリティエンジニアの不足です。われわれはベンダーなので専任の人材がいますが、とくにエンドユーザーのところで、セキュリティエンジニアや運用担当者が足りていないというのが現状です。
そこで、そうした連携する製品を出すことによって、ある意味で自動化ができるようになります。製品が連携したり、脅威情報をやりとりすることで、お客様のセキュリティ対策のレベルも上がります。そうしたメリットを提供していくことで、人材不足を支援していきます。当社としては自動化を推進し、その後は「オーケストレーション」の分野のさまざまな製品を出していこうと考えています。
──最終的な目標は自動化であり、オーケストレーションであると。
手前みそですが、実際にコーポレート向けのエンドポイントでは、多くのお客様が「McAfee e-Policy Orchestrator(ePO)」という管理ソフトのもとでご利用いただいています。実はここが他のアンチウイルスメーカーとの最大の差異化になりまして、ePOをご利用いただくと、すべてのPCのアンチウイルスのバージョンなどが一元管理できるんです。万が一、PCのOSが古いとか、アンチウイルスのバージョンが古いといったことがあると、プッシュで更新をかけることができます。また、マルウェアに感染したらディスコネクトするとか、EDRの機能ももっています。ユーザー数が多いほど管理が大変です。マカフィーが海外の政府系機関や、日本の官公庁でご利用が多いのは、セキュリティ技術者不足の解決のためにお役に立てているからだと思います。
──今後の成長に向け注力していくことを教えてください。
日本の戦略としては、三本の柱を立てています。
一つは、日本のセキュリティエンジニアの不足を支援するための自動化ツールを提供していくこと。かつ、MSSPといわれるパートナー経由でセキュリティサービスを提供していくことです。
二つめが、働き方改革を支援するセキュリティの提供。流行に乗っているようですが、東京五輪の開催に向けて、国が音頭をとってテレワークを推進していますので、ここ3、4年でテレワークが普及するかと思います。ただ、テレワークの障壁として心配されているのが情報漏えいだと思います。当社ではDLPという情報漏えい対策の製品やセキュアなウェブアクセスができる製品をもっているので、働き方改革を実現するためのセキュリティ支援ができると思っています。パートナー様にとっては、自社の商材にプラスアルファでセキュリティを組み合わせて、テレワークの提案が可能です。
三つめが、IoTやOTといわれる制御系システムのセキュリティです。ここはまだまだ大きい市場だと思っています。OTの世界でも、ネットワークがITと完全に分離されておらずどこかでつながっていたり、セキュリティレベルが低かったりするのです。当社としては、そういったIoTやOTのセキュリティを支援していきます。
われわれセキュリティベンダーは、
製品ごとでは競合しても、ある意味で垣根を越えて、
協業していかなくてはいけないと思います。
<“KEY PERSON”の愛用品>最速タイムは「1分15秒」
大学時代、当時大流行した立方体パズル「ルービックキューブ」が解けず、以来ずっとコンプレックスだったという。5年前に「コンプレックスをなくそう」と思って再び向かい合い、1か月で面を揃えらえるようになったそうだ。

眼光紙背 ~取材を終えて~
山野氏がマカフィーの社長に就任して約一年。就任直後に、インテルからの独立に向けた動きが本格化し、ここまで激動だったのではと推察したものの、「この業界であればあり得る話」とあっさり。長年、外資系企業を渡り歩いてきただけあり、まったく動じることはない。
分社化により、自社の判断でM&Aができるようになったとしつつも、パートナーとの協業で不足を補うのが基本的な考えだ。山野社長は今後について、「分社したばかりなので何もコメントできない」と前置きしたうえで、「いろいろな調査をしており、さまざまな分野に興味をもっている。みんながまだ気がついていないような、新しい分野もある。そうしたところに関しては、外部から会社や技術を取得する可能性は高いだろう」とも言及。独立したセキュリティベンダーとして生まれ変わったマカフィーは、今後独自の戦略でビジネス拡大を図る。(宙)
プロフィール
山野 修
(やまの おさむ)
1959年、東京都生まれ。84年、東京工業大学大学院(制御工学専攻)修了後、米AT&T Bell Laboratoriesに主任研究員として入社。その後、横河ヒューレット・パッカード(現日本ヒューレット・パッカード)、オートデスク、RSAセキュリティなどを経て、10年にEMCジャパン副社長、11年に同社社長。16年5月、マカフィー社長に就任、現在に至る。米国本社の副社長を兼務する。
会社紹介
1987年に設立されたセキュリティベンダーであるマカフィーの日本法人。エンドポイントおよびネットワーク向けセキュリティ製品の販売・保守、セキュリティコンサルティングなどを手がける。POS端末やATMなどの組み込み向けセキュリティの実績も豊富。11年、米本社が半導体大手のインテルに買収され完全子会社となるが、17年4月、同社による売却手続きの完了を以って再びマカフィーとして独立した。