課題解決に向けてまっすぐ進む
──橋本さんは、国内企業だけでなく外資系企業の経営経験も豊富ですが、プロパーが多いNTTグループの“日本法人”は、ポジション的に異色というか、複雑な立ち位置ですよね。
気になりませんよ。そりゃ、レポートはアジア太平洋の本社があるシンガポールの上司に送りつつ、(NTTグループの本拠地のある)大手町からも呼び出されますが。ただディメンションデータの日本法人としての仕事は、グローバル顧客のサポートと、日本の顧客の海外ビジネスを支えることに焦点を絞っていますので、複雑ではありません。むしろ複雑だったものを私が単純化させました。
──この仕事を引き受けるきっかけはなんだったのでしょう。
シンガポール法人の前社長から何度も日本法人を任せられないかと打診があったことがきっかけでしたね。それに、もともと新しいことに挑戦するのが好きなんですよ。
初めて社会人になったとき、私は産業機械の営業だったのですが、ふらっと入ったお店で見かけた調味料の瓶(びん)のパッケージがひと世代前のものでした。お店を出たその足で、その調味料メーカーに電話をかけ、最新式の包装機械の売り込みをかけて受注につなげたり、他にも当時まだ目新しかった音楽CDケース向け包装機械の営業は、私が一番乗りだったりしましたね。
先輩から既存客を引き継ぐよりも、自分で開拓したほうが自由度が高い。顧客の課題さえはっきりみえれば、その課題解決に向けてまっすぐ進んでいける。先輩から引き継ぎうんぬんの余計な雑音なんていりません(笑)。
──これからのディメンションデータジャパンの経営について教えてください。
「NTTグループのなかでディメンションデータは異色だけど、仲良くしておいた方がいい」と思われるような会社であり続けたいですね。すでに海外に進出している会社も、これから進出する会社も、当社と接点をもっておくことで、海外で何かあったときに助かる。そんな存在として認知してもらいたい。繰り返しになりますが、国内外を問わず、ネットワークやセキュリティ、コラボレーションの領域で質の高いサービスを提供できるのが当社の強み。これまで、ややもすれば存在感の薄かった日本法人ですが、これからはNTTデータやNTTコムと並んで、顧客のグローバルビジネスを支えていくプレーヤーへと成長させていく考えです。
「NTTグループのなかでディメンションデータは異色だけど、
仲良くしておいた方がいい」と思われるような会社であり続けたい。
<“KEY PERSON”の愛用品>白い靴ひもで清涼感を演出
米国の「オールデン」ブランドの靴がお気に入り。大事な商談や出張のときは、「だいたいオールデンを履く」とのこと。夏の時期、靴ひもは清涼感をイメージする白色。季節に合わせて変えるなど、おしゃれにも気遣いしている。

眼光紙背 ~取材を終えて~
複雑なことが嫌いで、顧客の課題解決にまっすぐ挑むのが橋本社長の経営手法である。自社の強みをグローバルITサービスに集約。これまでなかなか振り向いてくれなかった日本の顧客に熱烈なアプローチをかけられるよう、トップ就任1年でディメンションデータの日本法人を大胆に改革した。
国内はNTTグループの牙城であり、外様のディメンションデータが入り込む余地はそもそも少ない。それでも、「新規顧客を開拓したり、新規案件を受注する分には、誰も何もいわない」と、外野を気にせず果敢に挑戦する。
経済のグローバル化で、海外に成長を求める日本企業が増えていることが日本法人にとって大きな追い風になっている。NTTデータやNTTコムもグローバルITサービスを強力に推し進めており、「ディメンションデータが強みとする地域や領域との相乗効果」をこれまで以上に高めていく方針だ。(寶)
プロフィール
橋本晃秀
(はしもと てるひで)
1957年、東京生まれ。1980年、京都製作所入社。87年、日本ヒューレット・パッカード(旧横河ヒューレット・パッカード、旧日本アポロコンピュータ)本社営業部課長。2000年、シマンテック・ウェブサイトセキュリティ(旧日本ベリサイン)社長兼CEO。08年、シーディーネットワークス・ジャパン社長。12年、エヌシーアイ(現アイティーエム)社長。16年8月、ディメンションデータジャパン代表取締役社長に就任。
会社紹介
ディメンションデータグループは、1983年に南アフリカで創業。アフリカ、欧州、アジア、米州、オセアニアの49か国で、3万人の人員を展開している。ITマネージドサービスを中心に2016年度の連結売上高は75億米ドル(約8250億円)。ディメンションデータジャパンはその日本法人。10年にNTTグループに入り、NTTコミュニケーションズやNTTデータなどと並んで主要子会社の一角を占める。