兄弟会社だったシステム運用のビーエスピー(BSP)とデータ活用のビーコンインフォメーションテクノロジー(ビーコンIT)が、2015年4月に合併し、誕生したユニリタ。連結子会社7社を抱える同社の代表取締役社長執行役員に4月、北野裕行氏が就任した。託されたのはデジタル変革が進むなかでの「構造改革」だ。入社以来、営業畑で培った現場力を生かし、パートナー戦略などで革新的な策を打ち出している。
営業とカスタマサポートで顧客開拓
──前社長(竹藤浩樹・前代表取締役社長執行役員=現取締役会長)と比べますと、北野社長になって相当若返りました。どんな役割を託されたと感じていますか。
竹藤は、42歳で社長に就任し13年間走ってきました。本人は最近、ターニングポイントを考えていたようです。今回の社長交代が、それだったと思います。竹藤は、在任中に株式上場を果たし、M&A(企業の合併買収)も実現、企業規模を大きくしました。一方、ITマーケットは、デジタル化の進展が速く、従来のビジネスが通用しない。世代交代しなければ、そのスピードに乗り遅れると危機感を抱いていました。私の役目は、それらを含め会社全体の「構造改革」の任を受けたと思います。
──合併や、合併に伴う社名変更など、重要な転換期に、技術畑の従来路線ではない社長として選ばれました。その営業目線で、どんな改革を始めているのでしょうか。
私は、営業経験が長かったので、旧BSPの頃からユニリタになってからも含め、変えたかったことがあります。以前は、「全員営業」という言葉がありました。営業と技術が役割をわけずに顧客の獲得を目指すということです。しかし、この言葉は、最近薄れていました。その状態を改めるため、両者の連携を強化しました。いまやっているのは、直販の営業部隊にカスタマサービス部隊をつけ、フロント営業の強化をしています。従来、営業が約30人だったところ、カスタマサービスが約30人加わり、2倍の人的リソースで顧客先に出向いています。
もう一つ、当社はもともとプロダクト・メーカーなのですが、単品売りが多く、一つ製品を販売すると、売るものがなくなってしまうスタイルでした。ユニリタのグループ会社には、製品が30種類程度あります。深く、垂直に提案したり、横展開できるはずです。ただ、当社の営業はそれが苦手なんです。当社には、優良顧客が900社程度あります。そのアクティブな顧客に対するクロスセルとアップセルを、営業とカスタマサポートの両チームが連携して進めています。私が社長になったことで、「顧客の立場になって」提案活動をして、顧客の「真のパートナー」になることをスローガンとしました。
──ユニリタには、歴史のあるユーザー企業のコミュニティがあってシンポジウムを開いたり研究会を進めるなど、ユーザー相互の活動が活発です。ですので、ユニリタは、ユーザー企業の“心臓部”に入っている印象がありますが……
いえ、旧BSPの顧客は、旧ビーコンITの製品をよく知らない。逆もしかりです。旧BSPはシステム運用のツールを提供する会社であり、まさか、旧ビーコンITが提供するBI(ビジネス・インテリジェンス)や、ETL(システム連携)などのツールを使えると思っていなかったのです。顧客のイメージが変わっていないのです。
もともと、合併したねらいの一つには、システム運用でコストを削減し、その削減された予算で、データ活用などのビジネスに貢献する領域に投資してもらうという、いいサイクルで顧客を増やすことでした。ただ、顧客の意識が変わらず当社の営業も変わっていませんでした。
「攻めの投資」の領域へ攻める
──では、そこをどう意識改革していきますか。
営業だけでは無理です。営業だけですと、もの売りで単品売りになるので、当社対顧客、会社対会社のフォーメーションをつくり、深いところに入り込みます。
──「ビジネス貢献への投資」は、最近の言葉ですと「攻めの投資」といえますね。旧BSP時代のかなり前から、顧客の「攻めの投資」に対する取り組みを強化する戦略が示されていました。ユニリタの得意分野を、「守りの投資」から「攻めの投資」へと変える必要があるということですね。
ユーザー企業の「守りの投資」では、運用部分をアウトソーシングする傾向が強まっています。当社には、ベストセラーのジョブ管理ツール「A-AUTO」があります。ただ、ここのところ、一般企業のシステムプロが、同ツールの導入を検討するケースが減っています。運用部分は、データセンター事業者やシステム子会社など、外に出しています。ですから、運用領域を成長させるには、運用が集まるところに“仕掛け”をする必要があります。まず、今年春には、データセンター事業者でもあるアイネットと資本・業務提携しました。
──アイネットが提供する「Dream Cloud」上にユニリタのA-AUTOやETLソフト「Waha! Transformer」をオンプレミス版と同等の機能で提供するということですが、既存・新規の顧客をここに集約することが目的ですか。
いえ、そんなことはありません。当社のねらいは「ロングテール」の部分にあります。アイネットはクラウド上で業務アプリケーションを提供しています。顧客は、中堅・中小企業(SMB)や、中堅・大企業の事業部門です。この領域は、当社でどんなに直販営業を強化しても、手の届かない市場なんです。
これと関連して、パートナー・ビジネスを強化しています。顧客に変革を仕掛けるソリューションをもっているITベンダーが多くあります。当社製品はミドルウェアです。自動車でいうとエンジンしかありません。自動車をもっている会社にエンジンを提供しモデル化して顧客に売ってもらう。すでに、一緒にモデル化できたITベンダーが約20社あります。もっとも多いモデルは、マイグレーションベンダー5社との連携です。メインフレームからオープンシステムへの移行時には運用が必要になります。
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