A-AUTOなどにAIを搭載へ
──直販主体で販売展開しているイメージがありましたが、いつ頃から、パートナー・ビジネスを強化しているのですか。
パートナー・ビジネスを強化したのはユニリタになってからです。昨年、パートナーカンファレンスで「優秀パートナー」の新規モデル賞として表彰したのは、証券会社向けソフトウェア開発のインタートレード、飲食店経営のゴールデンマジック、システムインテグレータ(SIer)の都築電気などです。例えば、都築電気はコールセンター業務を手がけていますが、そこに当社のITサービスマネジメントソリューション「LMIS on cloud」で、複数会社のサービスデスクをマルチテナントで提供しています。
──17年度(18年3月期)の経営方針をみますと、「業種業界に強みをもつ企業と協業モデルを推進する」とあります。これは、ITベンダーとの協業とは違うのですか。
ダイヤモンドダイニングの子会社、ゴールデンマジックの例がこれです。当社の企業向けeラーニング・ナレッジシステム「LIVE UNIVERSE」などを使って、接客や会話スキルのベストプラクティス動画などで学習しています。同社とは今年4月、ビジネスパートナー基本契約を結びました。同社は自社に限らず、幅広い業界に拡販します。実は、こういう話はたくさんあります。
当社はスモールスタートで新規ビジネスを始める開発力やプラットフォームをもっていますので、それらを組み合わせてすぐに始められるんです。当社ではこれを「スモールスタート&クイックWin」と表現し、SMBを攻略しようとしています。今年度、サービス指向のビジネスモデルを推進する「デジタルサービス本部」を新設したのも、その領域を拡大するためです。
──協業モデルをつくれる相手を探すのは難しくないですか。ただ、これがうまく回ると「攻めの」領域に入り込めますね。
私はどんどん顧客先を回ります。そうしますと、AI(人工知能)やRPA(Robotic Process Automation)などの領域をやりたいという顧客が多くいます。「攻めの」領域を支援するには、ミドルウェアだけだとダメです。顧客の業務やアプリケーションに近い領域を手伝わないと、話を聞いていただけないのです。
いま、A-AUTOやWaha! Transformerに、AIを実装しようとしています。また、Waha! Transformerは開発ツールなので、EDI(電子データ交換)や経営の可視化などのソリューションをつくることができると思っています。顧客課題を解決するソリューション・テンプレートをつくり、Waha! Transformerと一緒に売っています。また「Smart FormationService」として、スモールスタートでアジャイル型でデジタル変革に立ち向かうシステムを構築できる仕組みをつくろうとしています。
「顧客の立場になって」提案活動をして、
顧客の「真のパートナー」になることをスローガンにした。
<“KEY PERSON”の愛用品>A-AUTOの販売30周年ボールペン
ユニリタの主力製品である運用自動化パッケージソフト「A-AUTO」を旧BSPが販売開始(1982年)して「30周年」を迎えた際につくったノベルティ。CROSS(クロス)の高級ボールペンだ。つねにスーツの内ポケットに入れ、メモをする際に使う。

眼光紙背 ~取材を終えて~
旧BSPの歴代社長は、三代続けて技術出身者が就いている。北野裕行社長は、初の営業出身になる。若いと思ったが、前社長の竹藤浩樹・現取締役会長も、40代で代表になっているので、既定路線なのだろう。
北野社長に託されたのは、急速に進展するデジタル改革への対応だ。企業の情報システム部門が担う運用部分に得意技がある。だが、この部分はアウトソーシングが進む。 従来の強みを生かし、もう一方のデータ活用などの領域で、顧客のビジネスに貢献して、同社のビジネス全体の構造改革を推進するのが当面の課題だ。
営業の最前線で、切った張ったを経験してきただけに、強面のイメージがある。だが、話を聞くうちに、時折、笑みがこぼれる。今後の戦略について実にロジカルに説明してくれた。関係性が深いアクティブな顧客が多い。これを生かせば、この会社、大きく変わりそうである。楽しみだ。(吾)
プロフィール
北野裕行
(きたの ひろゆき)
1970年10月、岡山県倉敷市生まれ、46歳。93年、近畿大学商経学部卒業。94年、ビーエスピー(BSP、現・ユニリタ)入社。2009年4月、BSP子会社でコンサルテーションのビーエスピーソリューションズで第一カンパニー部長を経て、12年4月に同社代表取締役社長とBSPの執行役員営業本部担当を兼務。以降、執行役員や取締役として西日本と東日本の営業を統括してきた。17年4月、ユニリタの代表取締役社長執行役員に就任。
会社紹介
2015年4月1日、コンピュータ運用自動化ソフトウェアなどを販売するビーエスピーと、兄弟会社でデータベース管理システムなどを展開するビーコンインフォメーションテクノロジーが合併し、「ユニリタ」が誕生。社名には、価値創造のために「ユニークな発想」で「利他の精神」をもってお客様と社会の発展に貢献するとの思いを込めた。グループ会社は、7社の連結子会社で構成している。