デルによるソフトウェア事業の売却によって、再びセキュリティ専業ベンダーとしての道を歩み始めたソニックウォールは、100%間接販売の姿勢のもと、パートナービジネスの強化に邁進している。新規パートナーを獲得し、かねてから存在感を発揮するSMB(中堅・中小企業)市場でのさらなる拡販を狙う。
独立したベンダーとして再始動
──昨年11月、デル・ソフトウェアグループの売却に伴ってデルから独立し、今年6月には社名変更後のクエスト・ソフトウェアからも独立して、セキュリティ専業ベンダーとして復活しました。デル時代のソニックウォールをどのように評価しますか。
よかった点の一つは、大きいモデルの製品販売量や市場の認知が拡大したことです。ソニックウォールというとSMB向けのファイアウォールという印象が強かったのですが、実はある程度の規模のエンタープライズ向けファイアウォールももっています。従来、完全にチャネル販売でビジネスを展開してきましたが、デルグループのなかでは、デルの直販部隊がある程度大きいエンタープライズ系の企業に対して製品を提案してくれていました。一方、デル自身はコンピュータメーカーですので、競合する国産のコンピュータメーカーとはなかなか組みにくかったというのはありましたね。
──デルから独立したことによるパートナーやエンドユーザーからの反応というのはどうだったのでしょうか。
デル時代のソニックウォールは、ある意味デルのなかの一製品にすぎなかったわけで、デル全体のなかでみると、存在感がちょっと薄いところがありました。今回、もう一度独立したセキュリティ専業ベンダーとなることで、研究開発費を含めた投資計画を自社で立てたり、製品ロードマップや代理店向けのパートナープログラムをマーケットに対して打ち出すなど、デルとしてはなかなかできなかったところをわれわれ独自で行えるようになりました。ここは、非常に評価をいただいているところだと思います。
──藤岡社長は、ソニックウォールのビジネスに携わって4年ほどになります。入社して気づいたソニックウォールの強みなどはありますか。
前職がチェック・ポイントでしたので、エンタープライズ寄りのチェック・ポイントと、SMBに強いソニックウォールという違いはあれど、ソニックウォールという名前は当然、よく知っていました。一番強いと思ったのは、もともと製品を開発していたエンジニアのグループが、いまだにほとんどメンバーが変わらず残っていることです。セキュリティ業界のナレッジに非常に深く、代理店やエンドユーザーに対する支援体制も厚い会社だというのが、新たな気づきとしてありました。また、本社を含めて風通しがよく闊達で、何でも話せる社風です。
パートナービジネスを加速させる
──昨年11月、グローバルで新たなパートナープログラム「SecureFirst」を発表されました。今年6月末の時点で、90か国1万5000社を超えるパートナーが登録し、そのうちの4000社が新規の取引になるなど、好調なようですね。日本では今年5月にスタートしました。
各種プログラムを展開するための準備をしていたので、正式には8月に開始したのですが、いち早くローンチした米国では、SecureFirstを使って新規のリセラーを数多く獲得し、業績もよくなっています。パートナープログラムをやることによって、今まで他社の製品を提案していたようなリセラーが、パートナープログラムのメリットを使って当社の製品を提案してくれています。日本も同じように、今までわれわれの製品を売ったことのない販売代理店を新規のパートナーとして、これから積極的に増やしていきたいと思っています。
──新たに製品を扱い始めたパートナーは、ソニックウォールのどこを評価したのでしょうか。
一番大きいのは、案件の登録や成約したときなど、プログラムに参加することでパートナーが得られるフィナンシャルベネフィットがそれなりにいい条件になっていることです。また、「SonicWall University」というパートナー向けの教育プログラムを用意していることも一つです。きちんとトレーニングしないと製品を販売するのは難しいですが、上級者、中級者、初心者向けなど、かなりきめ細やかにコースを揃えて、オンラインで受講できるようなトレーニングメニューを設けています。あとは、日本だけでなく、各国の現地法人が新規で登録されたパートナーに対してオフィスでトレーニングするなど、そうした活動を積極的に行っている結果だと思います。
──SMB市場に強いソニックウォールですが、これからの戦略としても、SMBを中心に展開されていくとうかがっています。
そうですね。SMB向けは引き続き、今まで通りに展開していきます。中小企業においても近年、セキュリティへの意識は高まっていますが、知識不足などが影響し、実際に対策を講じるというところまでは十分に普及していないのが現状です。極端なことをいうと、ルータだけ入れているというお客様もたくさんいます。製品を未導入の企業に対してはセキュリティ対策の啓発を行い、すでに導入済みのところに対しては、設計思想の段階からSMB向けにつくられていて、運用が簡単だというわれわれの製品の優位性を理解していただけるようにしていきます。
加えて、官公庁や教育機関といったパブリックのマーケットには、ミッドからハイエンドモデルの需要がありますので、こちらもあわせて推進していきます。
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