現場主導で“人が集まる会社”に
──今、IT人材やセキュリティ人材が不足しているといわれていますが、ラックでは近年、人材採用に関して、「学歴別初任給制の廃止」や「即!西本面接」など特徴的な取り組みを行っています。その狙いはなんでしょうか。
これは各部門の自立に任せていることなんです。私が言っているのは、人が集まる会社にすれば勝てる。人が集まる会社にしたいということ。人が集まるというのは収益を上げていて、お客様の満足度も高いということですよね。だから社員も喜んで、働きがいのある会社になっている。そこで、人が集まる会社にするための方法を考えてくれと言うと、「学歴別初任給制の廃止」や「即!西本面接」というものを現場が知恵を絞って考えてくれたんです。しかも私がダメとか言いそうなことを恐れずに提案してくれたので出来上がったんです。そうやって動ける会社です。この施策そのものがいいのではなくて、こういう施策を現場が考えてもってきて動かして、走りながらよかったこと悪かったことを反省しつつ次に発展させていく会社なんだということを、評価いただきたいですね。
──どちらかというと“人が集まる会社”を目指しての施策だったというわけですね。
もちろん、人を採りたいというのもあります。即面接ではCTFという、端的にいうとネットを使ったセキュリティクイズみたいなものなんですが、知的好奇心があっておもしろそうって思える方が集まってくるんです。しかも問題を解こうとするとそこそこ時間がかかるので、根気のある人が集まってくるんです。これってズバリ欲しい人材で、テストを突破した人というのは面接どころか即採用をしてもいいくらいの人なんですよ。なので、こうしたことも試行錯誤することで、自分たちが採りたい人はどうやったら興味をもってくれるのかということを一つ実践したということです。即面接については、今年は10数人が受けて、面接して合格したのが3人。この3人には、その場で年俸を提示しました。
──実際にやってみて、手ごたえはいかがですか。
手ごたえは非常に感じています。今後もぜひ継続していきたいし、ラックだけではなく業界含めて名物にしていきたい。ある意味、「今年の漢字」のように「今年のラックCTFはこれだ!」みたいな風物詩ぐらいまでなるといいなとか、社外の人にも問題を解いてもらったり、新人だけではなくて普通の技術者の人が普通の腕試しとして解いてみたりといった風に活用できるといいなと思いますね。
──会社としての、今後の方向性を教えてください。
やはり当然ですが、会社を大きくしていきたい。少なくともこの先2、3年を見据えたときには、まず二本足で歩き出したところの筋肉をしっかりつけるというのが一つめです。
二つめは、二本足からさらに、三つめの事業基盤をつくること。これは、SIが好調だったときはSS(セキュリティソリューション)があんまりだったりとか、SSがいいときはSIが今一歩であるとか、相互補完しているようなところがあるんです。やはり景気変動や環境変化に強い会社にしようとすると、同等規模に育つような軸足の事業をもう一本はつくる必要があるだろうと。そのためにはスタッフ部門のインテリジェンスを上げる必要があるし、技術関係では例えば文章能力とかシナリオライティングといった基礎教養的なところなど、単にキーボードを叩いてものをつくったりセキュリティの腕を磨くだけではない部分の力を全体でいかに底上げしていくかが非常に重要だと思います。会社としての基礎力といいますか、それをここ何年かでつける必要があるだろうと思っています。
SIとセキュリティが二つの足で立ってよちよち歩きを始めたところ。
少しは社会に認められ、これから勝負していくぞというスタートラインにようやく着けたと思っています。
<“KEY PERSON”の愛用品>東筑高校の校名ボール
出身校である福岡県立東筑高校の野球部が今夏、21年ぶり6回目の甲子園出場を果たす。西本社長も現地まで応援に駆けつけた。残念ながら1回戦で愛媛・済美高校に敗れたものの、「強豪校相手によくがんばった」と健闘をたたえた。


眼光紙背 ~取材を終えて~
社長になることは思ってもいなかったという西本社長だが、心にあるのは創業者の三柴氏の姿だ。「典型的な昭和の中小企業のオヤジ」だったという。「一日36時間一年720日くらい働いているように思わせる人。そういう生き様は、上に立つような人間というのはそのくらいやらないといけないのではないかという恐怖心と責務みたいなものを埋め込まれた」と話す。
人が集まる会社を目指すラックは今、自社の働き方改革にも力を入れている。会社の利益とともに社員の幸せを追求することが重要であるという西本社長の想いからだ。現場の自主性を重んじ、社内外の人たちにとってより魅力ある会社となる姿を描きながら、二本足で歩いていく。(宙)
プロフィール
西本逸郎
(にしもと いつろう)
1958年、福岡県出身。熊本大学工学部中退。84年に入社した日本コンピューター・サービス・センター(現:情報技術開発)を経て、86年、旧ラックに入社、91年以降、同社取締役を務める。組織再編を経て設立された現ラックでは、取締役兼専務執行役員CTO、CISOを務め、17年4月より現職。
会社紹介
1986年9月に創業。組織再編を経て現ラックは2007年10月に設立。システム構築事業とセキュリティソリューション事業を展開する。直近の連結売上高は371億円(17年3月期)、連結従業員数は1734人(17年4月1日時点)。