SaaS型のITサービスマネジメントプラットフォームを提供する米ServiceNowは、2004年の設立以降、着実に売り上げを伸ばしている有力ITベンチャー。日本法人を13年に設立し、以降、日本市場を注力市場としてビジネスを展開している。現在まで2年間、社長として同社の国内ビジネスを導いている村瀬将思社長に、同社のビジネスや強みについて話を聞いた。
グローバルで採用されるServiceNow
──社長に就任されてから2年が経ちました。これまでを振り返ってみて、どのような思いがありますか。
入社してから2年ほどになりますが、これまでのキャリアのなかで最も成功しているビジネスだと思います。これほど引きが強いビジネスは初めてです。
当社の提供するITサービスマネジメントプラットフォームと同領域にあたるものは、前職でも経験がありました。ただ、前はオンプレミスだったのに対し、今回はSaaSというクラウド型のサービスなので、提供形態がまったく異なります。
日本でクラウド市場の成熟度が上がってきたこともあって、われわれの製品力と市場の成熟度がちょうどミートしたのがここ1、2年のこと。もちろんセールスもかけていますが、お客様側から引き合いがくることが本当に多いんです。それがこのビジネスの醍醐味ではないでしょうか。このタイミングで社長になれたのは本当にラッキーだったと思います。
──それほどまでに、引き合いがくる理由は何なのでしょうか。
われわれはITの世界のなかでも、ITをサービスとしてどう提供するのかというITサービスマネジメントを手がけています。
例えばPCが壊れると、IT担当者に連絡し、修理をするというプロセスがある。これはIT担当者が修理というサービスを提供しているわけですが、このサービスを提供する仕組みをつくっているのがITサービスマネジメントです。
ITサービスマネジメントを管理するオンプレミスのソフトウェアが数年前からあり、それが今、EOS(サポート終了)の時期にきています。それをオンプレミスのものに入れ替えるのかというとそうではなく、クラウド型の製品を選ぶケースが非常に多い。その世界でいうと、当社はSaaSではトップシェアです。ほとんど選択肢もないかたちで、ServiceNowを選んでいただいています。
──入れ替えが、一つの大きなニーズになっているということですね。
また、当社ではグローバル企業をターゲットにしていて、「フォーブス・グローバル2000(G2K)」のなかの1000社を、20年までServiceNowのお客様にしようと狙っています。実はグローバル2000(17年)のうち、229社が日本の会社です。日本にそうした大きなお客さんが多くおられるということになります。
欧米ではServiceNowをすでにご利用いただいているケースもかなりありますので、実績が評価されていますし、グローバルで同じプラットフォームを使いたいとなると、日本でもServiceNowを採用するというのは、ある意味しごくあたりまえなことだといえるのではないでしょうか。
デジタル変革を促す
──改めて、ITサービスマネジメントプラットフォーム「ServiceNow」の特徴を教えていただけますか。
サービスの利用者(社員)と提供者側(IT、人事など)の間をワークフローでつなぎ、定型業務はなるべく自動化して効率化、かつリクエストの状況を可視化します。何かサービスを要求するとき、利用者はメールではなくスマートフォンなどからポータル画面上でメニューを選択します。提供者側ではリクエストの内容に応じてIT担当者や人事などの関係者に要求が渡って作業の優先順位付けを行い、部署間でコラボレーションして、定型業務は自動化します。利用者側は、要求したサービスが今にどういうステータスなのか確認できます。
「働き方改革」というと、「時短」を想起されることが多いですが、当社の場合は、実際に働くやり方自体を変えましょうというアプローチです。例えば、社内業務のオーダーにメールを使うのをやめて、ServiceNowを使うと、フローが効率化されます。
もともとは「IT」から始まり、現在では「セキュリティ」「カスタマサービス」「人事」「ビジネスアプリケーション」などへと拡張し、企業全体で利用することができます。
ポイントはプラットフォームが同じだということ。データベースが一つなので、同一のプラットフォーム上でさまざまな業務がまかなえます。はじめはITのヘルプデスクとして導入してIT部門内で展開し、業務変革ができたらIT部門がリーダーシップをとって、各部署のデジタル変革を推進していくというケースが多いです。
──どのような産業領域のユーザー企業が多いですか。
とくにグローバル展開している製造業での利用が広がっています。また、規制の厳しい製薬は、業界として相性がいいです。そのほか、金融や保険、流通・サービス業界などで実績があります。
──ServiceNowの強みは何でしょうか。
ハッピーカスタマが多いことですね。当社のサービスでは、プラットフォームのなかにあるものを、設定だけ変えて使っていただくことができるので、3か月程度でプロジェクトが終わり、結果が出てくる。それがダメであればまた設定を変えるということができるので、トライアンドエラーを重ねながら、世の中の流れに合ったしくみをつくることができ、お客様が本当にやりたかったことにキャッチアップできます。
当社のサービスは、サブスクリプションなので、売り切りではなく、使い続けていただかないといけません。つまり、お客様がハッピーでないと儲からないということ。われわれは売ってお客様に使ってもらい、喜んでいただいて初めて儲かることができるんです。ユーザーがリードするかたちで、会社もグローバルで成長してきました。
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