中堅・中小企業をターゲットにSI事業を手がけるNECネクサソリューションズの社長に就任してから1年半がたった。就任当初から構想していた新規領域の事業が形になりつつある。2016年から段階的に社内体制を整え、今年は本格的に走り出す。
満を持して新規事業を推進
──今取り組んでいる新規領域と取り組み始めた経緯を教えてください。
市場、そしてお客様のなかで、IoT、ビッグデータ、AIという技術トレンドの高まりを感じました。社長に就任した16年は、このブームが起こり始めた年でもあります。お客様からAIで何かできないか、という問い合わせもいただき始めていました。
お客様に対し、よりスピーディな、一歩先の提案をできるよう、いろいろな情報を提供できるよう、社内体制をまず変えていきました。16年10月、17年1月、そして17年4月と段階を追って変更してきています。
──まず、社内体制の整備に着手されたのはなぜでしょうか。
最近の傾向であるIoT、ビッグデータ、AI、さらには働き方改革は特定業種だけの話ではなく、業種、業界共通で提案できます。また、お客様は関連する業種の動きに敏感になっています。例えば、製造業は小売りの、小売りは製造業の、といった具合に。住民サービスが仕事の自治体は、サービス業がどんな取り組みをしているか関心をもっています。つまり、その業種のプロとしての知識だけではなく、幅広くいろいろな情報をお客様から求められるケースが増えています。そのお客様のニーズにお応えするため、組織変更を決めました。
具体的には社内の情報を共有化し、やり取りを頻繁にできるように業種の壁を取り除きました。これまでは民間会社に対応する部隊、官公系の部隊と業種・業界別に分けていました。これに加えてシステムとしてコンピュータ系の部隊、データセンターとBPOの部隊、IoTとネットワークの三つがありました。これを情報の流通がしやすいように民間と官公をまとめ営業ユニットとし、このほか、SI・サービスユニット、コーポレートスタッフユニットの三つに分けました。お客様にはユニット単位でどう対応していくか、どんな提案をしていくかを決めています。今までは業種間のコミュニケーションがとりにくかったのですが、これにより、業種の壁を越えてお客様の要望に応えることができます。
今回の組織変更は、技術的に大きな変革があり、世界が大きく変わろうとしている。それに合わせた体制変更です。社内体制の見直し、変更はこれで終わりではなく、市場の状況やお客様の要望が変化すれば、それに合わせて今後も変えていきたいと思っています。
──社内体制の変更に合わせて17年4月に新規事業に特化した専門部隊を立ち上げました。この部署の役割を教えてください。
IoT、ビッグデータ、AIと新しい技術を使ってもっとICTの利活用を進めたい、というお客様の要求が今後ますます高まるだろうと思い、SI・サービスユニットのなかにソリューション開発部を設置しました。ここは新しい技術の情報を収集し、それを生かした仕掛け、ソリューションをお客様に提案する、新しい領域に特化して対応する部隊になります。ツールをつくり、お客様への提案の仕方をつくり、お客様からの質問を集約する、つまり新しい領域に関する情報を1か所に集め、整理し、営業にフィードバックしています。
例えば、IoTの実証実験に関するデータもここが中心になって情報を集め、必要となれば実験を行います。グループ内で、先行して実施しているIoTの実証実験の情報を入手します。とくにNECはずいぶん前から取り組んでいますので、そうしたデータは豊富です。こうした過去の実証実験の情報があれば適応することでどのようなメリットがあるか、すぐわかるのでお客様に即座に答えることができます。また、当社で行う実証実験は過去にグループ内で実施したことのないものに絞ることができます。
16年から17年には問い合わせ件数が10倍ほど増えました。さらに17年後半には各社、具体的な取り組みの案件が増え、本格化したことを感じました。今は製造業、プロセス業を中心にしていますが、最近は流通業、サービス業などにも広がっています。今年はますます本格化していくことでしょう。
年代、性別に合わせた働き方を模索
──IoTやAIとともに働き方改革に関する取り組みが注目されていますが、どのように取り組まれていますか。
すでに在宅勤務やテレワークなどは取り入れています。今年はさらに本格化し、もっと広く対応していく計画です。具体的には年代、性別にあった働きやすい環境づくりを目指し、社内プロジェクトを立ち上げました。例えば、女性の結婚、出産、高齢の両親の介護、もちろん、若い方にも悩みや課題があります。それぞれメンバーを集めて活発な意見交換をし、そのなかからすぐにできるところから取り入れ、動き始めています。
また、定年間近の方にはその豊富なノウハウ、知識をもっと生かしてもらいたい、若手はよりスキルと知識を身につけ、第一線で活躍してもらいたい、女性は結婚、出産の後も安心して働き続けてもらいたいという思いがあります。それぞれ悩みがあり、一つひとつ解決できる環境と制度をつくっていきます。男女、年齢問わず悩みをクローズアップし、プロジェクトやタスクフォースのなかでどう対応していくか、進めています。
まずは社内で多様な働き方を模索し、ノウハウを蓄積し、働き方に関する課題をおもちのお客様にこうしたノウハウを提供していきます。
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