CAC Holdingsグループで、国内SI事業の中核的役割を担うシーエーシー(CAC)。同社が成長の柱に位置づけるのは「デジタルビジネス」だ。米国や中国、インドなど世界中から新しい技術やビジネスアイデアの取り込みに力を入れる。強みとする金融や製薬ユーザーへの提案力を高めるとともに、広く産業全般の新規顧客の獲得にもつなげる。今年1月にトップに就任した西森良太社長は、「自分たちの意識をより完全にトランスフォーメーションさせる」と抱負を語る。自らのデジタル転換を急ぐことでビジネスを一段と有利に進める構えだ。
新しいデジタルビジネスを成長の柱に
──グループの中核事業会社のCACのトップに就いて3か月目となります。まずは事業会社トップとしての抱負をお話しいただけますか。
新しいデジタルビジネスを成長の柱とするモデルに変える。今年1月からスタートした4か年の中期経営計画で掲げたスローガンです。私のトップとしての抱負も、まずはこの一言に集約されますね。
事業会社のCACは、主に国内事業を担当しており、強みとする業種領域は金融と製薬です。新しいデジタルビジネスは、既存顧客である金融や製薬でも起こっていますし、当社がこれまであまりおつき合いをしたことのない製造や流通・サービス業の顧客にも、当然のようにデジタルビジネスの波はきています。こうした新しいニーズをしっかりと取り込んでいくことが、成長につながると考えています。
──事業会社のCACが中心となって、グループ全体のデジタルビジネスを推進していくイメージでしょうか。
ちょっと違いますね。まずはグループ全体のことを簡単にお話ししますと、当社グループは持ち株会社のCAC Holdingsがあり、その傘下に国内、海外、医薬品開発支援サービスの大きく三つの領域に事業会社を配置しています。2017年12月期のグループ連結売上高532億円のうち、国内が57%、海外が22%、医薬品開発支援が21%を占める構成比です。CACは、57%を占める国内SI事業で中核的な役割を担っている位置づけです。
とはいうものの、グループ会社と横の連携がないわけではありません。むしろ、デジタルビジネス領域では積極的に連携を進めています。例えば、グループの中国会社、インド会社で新しいデジタルビジネスのアイデアが出たら、それを日本にもってきたり、逆にこちらから海外へもっていったりしています。ITの技術的な要素も大切ですが、デジタルビジネスはどうやって利用するかのアイデア勝負のところが大きい。
中国の一連のキャッシュレス社会への移行もそうですが、アイデア次第で新しいデジタルビジネスが次々と生まれているわけです。こうした最先端の利用シーンを各国事業会社で共有して、お互いに補完し合えるよう努めています。
──アイデアの逆輸入ですね。日本から海外へ進出したのち、海外で得た知見を国内に還元しておられると。
そうです。IT先進国の米国からの技術輸入もやりつつ、先進的なIT利活用の部分は中国やインドから積極的に採り入れる。顧客のデジタルビジネスを支援していくうえで、先進国と成長国の両方の知見を組み合わせられる点は、当社の強みの一つです。
米中印から事例やアイデアを取り込む
──デジタルビジネスでは、どんな取り組みをされていますか。海外会社との連携も含めて教えていただけますでしょうか。
感情を認識するアフェクティブ・コンピューティング(感情認識AI)をご存じでしょうか。主に映像から人の感情を読み取るソフトウェアで、当社では感情認識AIの開発で先行する米マサチューセッツ州のアフェクティバにCACグループとして一部出資するとともに、最新の技術を導入しています。この新しい技術をどうビジネスにつなげていくのかが課題なのですが、実は中国でいくつか商用化に向けた動きが出始めています。
具体的には、CACグループの中国会社で、学習塾の生徒の表情を読み取って、生徒たちが授業に集中できているかどうかを測定する。あるいは自動車の試運転でドライバーの表情から、ユーザーが製品を快適に使えているかを検証するわけです。
この技術はリアルタイムに感情を読み取りますので、授業のどの部分で生徒たちの集中力が落ちたのか。実際に製品を使ったユーザーがどの操作で迷うなどして、困惑の表情を浮かべたのかが時系列でわかります。人間の感情はけっこう顔に出ますからね。教育サービスや製品改善に大いに役立てられます。
──なぜ中国なのですか。
同じ事業会社として歯がゆいところはありますが、成長市場の中国は新しい技術を貪欲に取り込もうとする傾向が強いようです。もちろん当社の担当である国内においても実績づくりに力を入れており、今年2月には感情認識AIを使った動画分析サービス「心sensor(ココロセンサー)」を商品化。販売を本格化させています。中国での実績を国内にそのノウハウを「逆輸入」したり、日本で実績ができれば中国へ「輸出」したりと、事例やアイデアの部分は事業会社同士が密接に連携する。こうすることで各国会社の補完関係が強まり、デジタルビジネスの推進を加速できるとみています。
──主要な海外会社であるインドとの連携はどうですか。
インド会社のアクセルフロントラインは、欧州の自動車会社に向けて車載ソフトの開発を手がけているのですね。インドでは産学連携した基礎研究にも力を入れています。日本のCACは自動車業界との接点があまりありませんでしたので、欧州で実績のあるインド会社と連携しつつ、この分野への進出の可能性を探りたいと思っています。
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