グループウェア「desknet's NEO」などで知られるネオジャパンは今年1月、東証マザーズから東証一部へと上場市場変更を果たした。これを機に、自社製品の認知拡大や人材確保を強化する方針を示す。創業以来、変わらないのが、ものづくりの楽しさを追求し、チャレンジを続ける姿勢だ。1992年の設立以来、会社の成長を導いてきた齋藤晶議社長に話を聞いた。
いいものをつくる思いが原点
──今年1月に、東証マザーズ市場から東証一部へと上場市場を変更されました。その狙いをお聞かせいただけますか。
まずは、われわれの会社や製品の名前をより多くの人に知ってもらいたいというのが一つ。二つめは、当社はものをつくる会社ですから、エンジニアがたくさんほしい。一部上場ですと、人の募集がしやすくなります。この二つがメインです。あとは、信用力や信頼度が一部ではまた違うかなと。マザーズにはおよそ2年前に上場しましたが、その時から一部上場に向けて準備を進めていました。
──会社の設立からは26年が経ちました。振り返ってどのような思いがありますか。
気がついたら26年も経っていたという感じです。設立当初はとくに大それた目標があったわけでもなく、単純にものづくりがしたいと考えていました。いいものをつくりたい、みんなに喜んでもらいたいという思いだけは人一倍強くて、それを粛々とやり続けてきました。
──グループウェアの「desknet's NEO」が主力製品となっていますが、そもそもどのような経緯でこの製品が誕生したのでしょうか。
当初は、電力会社のシステム構築などを手がけていたのですが、そのなかで、外注先とのスケジュールを調整するために、ブラウザベースのスケジュール管理をつくったんです。それが非常に評判がよかった。じゃあというので、当時出てきたばかりのLinux OS上で動くものをつくってみたいと思ってかたちにしたのが、この製品です。今から20年ほど前のことになります。
スケジュール管理の次につくったのはウェブメールでした。今でこそあたりまえにあるものですが、当時の日本ではどの会社もつくっておらず、唯一、米国のヤフーが提供しているものがあったのですが、遅くてしょうがなかったんですよ。自分たちでつくるともっと速くできるのではないかと思って、ウェブベースのメールソフトをつくりました。これが二つめの機能です。それからもどんどんとつくり続けて、今は全部で25種類の機能を搭載しています。
──時代の流れに合わせて、必要な機能を載せていったということですね。
自分たちの特別なアイデアでつくったというものはあまりなくて、お客様からの声を聞いてかたちにしてきたのが当社の製品です。それを実現することが非常に楽しかったですね。
バージョンアップのチャレンジ
──ライバル他社のグループウェア製品と比べて、どのようなところに強みがありますか。
まず、テクノロジーが全然違います。例えば、5人10人で使う製品と1万人で使う製品は、アーキテクチャがまったく同じなんです。内部のコアエンジンがそのようにつくられているということですが、普通、そんなエンジンを使うと、数十人規模のユーザーにとってはすごく重かったり、インストールが大変だったりするものなのですが、全部一緒なんです。逆にいうと、そのエンジンで分散処理も平気でできるということ。これはおそらく普通に考えるとありえないことだと思います。
また、先ほども言ったように、お客様へのインタビューを徹底的に行い、その時その時の時勢に合わせた機能を提供できていることです。当社の製品は、年にメジャーバージョンアップを1回、マイナーバージョンアップを2回行っています。毎年毎年これだけバージョンアップをしているというのは、他社では聞いたことがないですね。
メジャーバージョンアップでは、チャレンジをします。それに対してユーザーからいろいろなお声をいただきますが、それが非常にありがたいんです。その後に、マイナーバージョンアップをします。そうするとよくなったと言ってくれるんですね。普通だと、メジャーバージョンアップで要望が多いものを反映すると思いますが、当社では逆です。チャレンジとメジャーバージョンアップが一緒なんです。そのチャレンジに対していろんな評価があります。なかでも悪い評価に関しては徹底的にインタビューを行い、マイナーバージョンアップをして改善する。地味なことを行っているんですよ。
──最近では、どのようなチャレンジをしているのですか。
昨年10月、グループウェア向けの新たな製品として、カスタムメイド型業務アプリ作成ツール「AppSuite」をリリースしました。これはデータベースなんです。会社にあるデータベースは外からはアクセスできなかったり、特別な製品にログインしなければいけなかったりと、面倒じゃないですか。グループウェアは毎日どこからでも見ることができますから、社内システムと同期していればすごく使いやすいですよね。だから今回、この機能を開発しました。
また、ウェブRTC技術を使ったリアルタイムコミュニケーションや、AI活用などにもチャレンジしています。これからもどんどん挑戦していきたいですね。
──これまでのお話から、齋藤社長はシェアで先行する競合他社を越えることというよりは、いかによりよい製品を提供していくかに強い思いを込めているようにうかがえます。
最終的には製品次第だと思っているんですよ。本当にいいものを追求していくことはおもしろいじゃないですか。それがわれわれのスタイルなので、この姿勢を貫いていきます。最終的には世の中や市場が判断することですが、こうやってチャレンジを続けていくと、おそらくちゃんと評価してくれると思っています。当社としては、きちんと評価されるようにやっていかないといけませんが、われわれがやりたいのは、お客様に喜んでもらえるような、いいものをつくること。それができれば自然と評価されてくるのではないでしょうか。
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