マイクロソフトとアクセンチュアが共同出資してつくったベンダーだという説明だけでも、アバナードのユニークさの片りんは伝わるだろう。クラウドが市場に浸透し、日本企業にも基幹業務システムを含めたクラウド移行の気運がようやく出てきた。「Microsoft Azure」環境への移行支援サービスを国内で本格的に開始した同社も、大きく成長できるタイミングだとみている。
“水平統合”でデジタル時代のニーズに応える
──アバナードは、出自はもちろん、マイクロソフト・プラットフォームに特化したテクノロジーコンサルティングとデリバリを手がけるというのもユニークですね。日本市場ではどんな顧客が多いですか。
おかげさまで、非常に大きく成長しています。具体的な数字はいえなくて申し訳ないのですが。成長の要因は、とにもかくにもグローバリゼーションのトレンドですね。日本の企業も、もはや多かれ少なかれグローバルにマーケットを求めざるを得ない状況になっていますから、情報システムのグローバリゼーションも同時に考えなければならないわけです。当社はもともと外資系のベンダーですし、競合ベンダーと比べてグローバリゼーションが得意だと市場に思われている。これは大きいですね。
──同時に、市場にはデジタル変革という軸も出てきています。
デジタル変革の波に乗るという意味では、日本は数週遅れていますが、デジタル変革とグローバリゼーションの両軸に対応するとなると、まずは最初の一歩として、セキュリティとID管理が重要になります。日本企業はトップクラスの企業でも、国内で使っているユーザーIDが海外拠点では使えないなんていうことがざらにあるんです。例えばERPで、日本本社のベースとなる日本本社のテンプレートを世界各国の拠点にロールアウトして仕組みを世界統一するようなケースでも、ID、セキュリティ管理の統合は避けられません。そこでのノウハウを当社は評価されています。
──マイクロソフト製品が強みを発揮できる領域でもありますね。
デジタルの時代ということでは、ITのバイヤーが情報システム部門からユーザー部門にシフトしてきていることも考慮する必要があります。根本的には、営業成績を上げたいとか、そういうことが業務部門のユーザーの目的になるわけです。ERP、CRMといった業務カットのアプリケーションは残るでしょうが、単一のアプリケーションでは彼らの目的を総合的に達成するのには不十分なんです。水平統合でさまざまなアプリケーションを組み合わせて使うことでデジタル時代のユーザーの目的は初めて達成される。そうすると、コミュニケーションツールやOSを誰が握っているのかというのがとても重要な水平統合の核になっていて、幸か不幸かどこの会社でも、90%~95%のPCはWindowsが動いていて、80%~90%くらいがメールやコミュニケーション・テクノロジーが占めています。だから、マイクロソフト・テクノロジーを核にして水平統合を進めていくというのは、ベンダーのビジネスとしても非常に優位性があるんです。
マイクロソフトの実績とノウハウは世界一
──なるほど。しかし、見方によっては「マイクロソフト縛り」にもなってしまいそうですが、それは足かせになってしまう場合もありませんか。
マイクロソフトはサティア・ナデラCEOが就任してから、非常にオープン化しています。Dockerコンテナを使えるようにしたり、JavaをAzureで動かせるようにしたりといった流れがありますよね。ですから、われわれも必然的にオープンにならざるを得ないところはあります。実際は、例えばアプリケーションもすべてマイクロソフト製品になるのではと思うかもしれませんが、そんなことはなくて、ERPならDynamicsでなくSAPというケースもありますし、IoTソリューションなどもマイクロソフト・テクノロジーだけで構成されるとは限りません。あくまでも先ほど申し上げた水平統合の核の部分でマイクロソフト・テクノロジーには非常に優位性があるということです。
――コラボレーション、コミュニケーションのツールやOSはともかく、Dynamicsに代表される、いわゆる業務系のアプリケーションはまだブランド力という意味で弱いと感じますか。
いいえ。先ほど申し上げたように、お客様がIT部門からユーザー部門に変わってきているので、ソリューションとして成立していて、かつコンペティティブでありさえすれば、彼らは製品がなんであるかにはこだわらないですよ。言い方が難しいですが、「それがそのコストでできるなら、マイクロソフト製品でいいじゃん」という感じです。マイクロソフトの業務アプリケーションの競争力も上がっていると思います。
そこも含めて、当社はマイクロソフト・テクノロジーのインプリメンテーションでは世界一の実績とノウハウをもっていると思っていて、ビジネス上の強みもそこにあります。
──世界一ですか。
もちろん、マイクロソフト製品についてはマイクロソフトのほうが詳しいことは多いわけですが、例えばCRM製品などでも、実際に使ってみた際の癖とか、その制御の仕方なんかは当社のほうが詳しいはずです。グローバリゼーションをするときに、あまりたくさんセキュリティグループをつくってしまうとパフォーマンスが悪くなってしまうとか。グローバリゼーションと水平統合によるデジタル化については本当にたくさんの案件をこなしていますから。
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