「電話」をITで制御するテクノロジーで世界最大手のアバイア。昨年1月のチャプター11(連邦倒産法第11章に基づく再建手続適用)申請前後には、コールセンターソリューション事業の売却もささやかれたが、結果的には競争力のあるコア事業を保持したまま再建を果たすことに成功した。国内では得意のコールセンターに加え、働き方改革の機運を追い風として、一般企業向けにもコミュニケーション改革の提案を強化していく。
“三方良し”の経営再建
──チャプター11申請による国内事業への影響はどれくらいありましたか。
日本において当社製品は、大規模なコールセンターでお使いいただいているケースが多いのですが、おかげさまでほとんどのお客様には冷静に対応いただき、事業への重大なインパクトは生じませんでした。アバイアの事業自体は順調で、健全なキャッシュフローを生んでいましたし、コールセンターソリューションなどのコアテクノロジーが失われるわけではないことをご理解いただけたので、大きな混乱を生むことはありませんでした。
──端的に言って、何が問題だったのでしょうか。
過去に当社が買収された際、買収したファンド側が借り入れた買収資金が当社のバランスシート上に残っており、稼いでも利息の支払いに消えてしまう状態が長年にわたって続いていました。この財務的な問題を整理するためにチャプター11という形を取り、債権者の方々には負債を圧縮した分の株式をもっていただきました。今年再上場を果たしましたので、最終的にはお客様、債権者の方々、そしてもちろんアバイア自身にとっても、よい形で再建することができたと考えています。
──国内のビジネスの概況と、今後の注力領域を教えてください。
当社の国内事業は、グローバルに比べてコールセンターソリューションの比率が非常に高いのが特徴で、大きくわけるとコールセンターが約9割、一般オフィス向けのユニファイドコミュニケーション(UC)が約1割です。日本はPBXやUCで国産ベンダーの勢力が非常に強い市場で、それに対してコールセンターはアバイアの優位性が出しやすい分野でした。ただ、電話から発展してきたUCという分野に、現在においても多額の研究開発投資ができるベンダーは多くないと思います。他社はほかの分野に投資をシフトする流れもありますが、アバイアはコミュニケーションが本業、本丸ですので、今後もUCのテクノロジーを進化させていきます。これからは日本市場でもコールセンターだけでなく、UCをさらに強化していきたいと考えています。
コールセンターとオフィスの基盤を統合
──今まさにお聞きした通り、コールセンター市場以外は国産ベンダーが強い分野だと思いますが、どのようにUCを提案されていきますか。
まず、既存のお客様の間では、コールセンターとオフィスのコミュニケーションを融合しようという動きが顕著になっています。例えば、複数の営業拠点をもち、コールセンターも運営しているという企業の場合、顧客から営業担当者へかかってきた電話も、いったんすべてコールセンターで取りたいというニーズがあります。コールセンターでも対応できる問い合わせに営業担当者が応対していると、それだけ営業活動に割ける時間が減ってしまうためです。当社のUCを導入いただければ、従来の営業所の番号にかかってきた電話をコールセンターで受け、コールセンターでサポートできないと判断した時点で、担当者のデスクの電話やモバイルを呼び出すという連携が可能になります。
──具体的には、どのような業種・業態を思い浮かべればいいのでしょうか。
金融系では以前からこのようなニーズがありましたが、最近は、業種を問わずですね。士業の事務所のお客様などからの引き合いも多く、事業所やコールセンターの規模の大小にかかわらず、同じような需要が顕在化しています。コールセンターとオフィスで分かれていたシステムが統合されればコストが下がりますし、別々で手間のかかっていた運用・管理も一元化できます。
──国内企業でオフィスの電話というと、今でもいわゆる「ビジネスフォン」のイメージが残っており、付加価値を求めるユーザーは必ずしも多くないようにもみえますが……。
PBXを更新しなければいけないというとき、果たしてそこに投資をするのか、という判断をされる時代だと思います。ビジネスでもこれだけモバイル端末が使われる時代に、とくに新しいことができるわけでもない製品に費用を投じるのか。「このままではいけないんじゃないか」とお気づきになるお客様は増えていると感じています。当社のUC基盤はクラウドでサービスとしてご提案できますので、お客様が資産を抱える必要もありません。UCは、導入する前は「あれば便利」というものかもしれませんが、一度使ってみれば、それによって得られる生産性向上効果は大きく感じていだたけるはずです。
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