インテックの北岡隆之社長はひらかれたオープンな世界で、互いの強みや専門性を連携させるビジネスを重視する。キーワードは「ひらく」「つなぐ」「変える」。自分たちの世界に閉じこもるのではなく、自らをひらいていくことがオープンなビジネスの活性化に役立つ。そして互いの強みを「つなぐ」ことで相乗効果を引き出す。その結果として「顧客のビジネスを一段と伸ばせるよう変革する支援」を通じて、社会をより豊かなものに「変える」ことを目指していく。
新中計、新経営トップの意気込み
──今年4月、三か年中期経営計画の初年度にトップにご就任されましたが、まずは中計にかける意気込みからお話ください。
今回の中計は、2026年までの中長期の企業ビジョンを実現するための最初の中計でもあります。当社やTISなどグループの主要事業会社が集まり、侃侃諤諤(かんかんがくがく)と議論をぶつけて策定した2026年までになりたい企業像とは、「先進技術・ノウハウを駆使し、ビジネスの革新と市場創造を実現する」というものです。少し抽象的なので、もう少し分かりやすく言うと、新しいビジネスを立ち上げて、市場を創り出していくことでしょうか。
──新しいビジネスの立ち上げでは、どのようなものを想定していますか。
例えば、IoTやAI(人工知能)、当社の強みとする通信ネットワークなどを活用して新しい事業を興していきます。
とはいえ、実際に新しい事業の立ち上げはそうそう簡単なことではありません。経営陣だけで考えるのでは限界がありますので、当社の先端技術研究所と各事業部門が連携して、新しいビジネスを興せるよう支援していきます。この支援部分を担う組織「事業戦略推進本部」を、4月1日の社長就任と同時に発足させました。研究所と事業部門、事業戦略推進本部が連携することで、新規事業の立ち上げを促進していきます。
AIであれば、工場の生産ラインの異常検知の精度を高めるために活用したり、IoTで集めたデータを統合して分析する。こうした技術要素を事業化するには、技術に長けた研究所と、ユーザーのことを一番よく知っている事業部門、それからビジネス化を推進する推進部門をうまく連携させていくことが大切だと考えたからです。
──既存のビジネスの延長線上では、ダメということですか。
ユーザー企業のビジネスが変わっていますので、ベンダー側のビジネスも必然的に常に変えていく必要があります。
中計では、独自の業務アプリケーションやクラウドサービスといった横展開が可能な商材開発と、自らが事業主となって新事業を立ち上げることを重点施策に掲げました。社内用語で前者はITオファリングサービス(IOS)、後者はフロンティア市場創造ビジネス(FCB)と区別して呼んでいます。
──独自の業務アプリケーションづくりは、これまでも多くのSIerが取り組んできたことではないですか。
そうです。ただ、それを継続させることが大事なんです。過去にそうした実績があるから大丈夫と安心するのではダメですよね。パッケージやフレームワークが充実していれば、システム構築にかかる時間やコストが削減でき、品質も高められる。ライバル他社に比べて優位に立ち続けるには、常に新しいコアパッケージなり、フレームワークをつくり続けなければなりません。
「つなぐ」ことで商談規模を最大化
──もうひとつ、自ら事業主になるパターンは、どういうものでしょう。
過去の例では、当社が通信ネットワーク分野に参入したことなどが、それに該当するのではないでしょうか。1980年代の通信自由化でVAN(付加価値ネットワーク)事業に参入。若い世代の人はVANなんて知らないかも知れませんが、当時、まだインターネットがありませんでしたので、企業間のデータ通信はVANを使うのが一般的でした。
今でこそSIerのサービス品目として通信ネットワークを取り扱うのは普通のことですが、当時はまだ珍しい取り組みでした。当社は、64年に富山計算センターからスタートしています。コンピューターがまだ高価だったとき、複数のユーザーで計算機を共同で使用するビジネスモデル。こうした計算センターが通信事業に参入することは、つまり自ら事業主となって新しいサービスを立ち上げることだったのです。
実のところ、当社はいろいろな取り組みをしておりました。比較的有名なのは、通信カラオケの「JOYSOUND(ジョイサウンド)」で、92年にブラザー工業と組んでサービスを立ち上げました。同じく通信ネットワークを使ってパソコンソフトの自動販売機にソフトウェアを配信するサービスも手がけていました。ブラザー工業という異業種と組んで、自らが事業主の1社となってサービスを始めた事例です。
──インテックとして、とくに力を入れていくことを挙げるとしたら、どのようなものでしょう。
当社はVAN事業への参入以来、通信ネットワークに強いSIerとして現在に至っていますので、「つなぐ」をキーワードに挙げたいですね。IoTのように現場のセンサとクラウド、コンピュータを「つなぐ」こともそうなのですが、ビジネス的にみれば、当社の商品やサービスを「つなぐ」ことで、顧客1社あたりの商談規模を大きくしていくという狙いもあります。
当社には約6500社の顧客基盤があります。しかし、単品の商品だけを取引している顧客がまだ多いのです。データセンター(DC)や通信ネットワーク、情報セキュリティなど、当社は幅広い商品を扱っていますので、これらを「つなぐ」ことで、より一層、顧客の役に立つ提案に力を入れていきたい。
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