多くの中堅規模のシステムインテグレーターにとって、下請け仕事への依存から脱却し、主体的に成長戦略を描けるビジネスモデルに転換していくことは喫緊の課題だ。金沢市に本拠を置くシステムサポートも、そうした取り組みを進めるSIerの1社だ。8月に東証マザーズへの上場も果たした同社の成長戦略を小清水良次社長に聞いた。
上場は人材確保のために必要だった
――8月に東証マザーズに上場しました。何がきっかけだったのでしょうか。
最大の理由は、人材を採用しやすくするためです。少なくとも資金調達が目的ではありません。
今年、新卒採用は43人でしたが、キャリア採用はそれ以上に多くて、東京だけでも60人ほどです。採用に関しては非常に力を入れていて、時間も人もお金もかなり投入しています。ただ、正直に言って苦戦しているんですよ。
――システムサポートというと石川県を代表するSIerという印象でしたが、その立ち位置は、例えば北陸出身の地元志向の人材採用などでメリットになりませんか。
金沢に本社を置いていますが、当社のビジネスの主要なフィールドは東名阪です。採用も当然そこで活躍してもらえる人材、そしてより当社を成長させてくれる人材に巡り合いたいわけです。ただ、特に地方に本社を置いていると、どこか東京の会社と競うと、会社の規模や実力というよりも、ブランド力で負けてしまう部分があって、そういう弱点を克服するのに、上場会社になるというのはすごく有効だったと思います。
あとは、優良顧客との取引拡大という側面で追い風になるという狙いはありましたね。当社は今、エンドユーザーと直の取引をする仕事にこだわっていて、特に初めてのお客様を増やしていくには、実力だけでなくブランド力も高めないとなかなか難しいですから。
――上場がこのタイミングになったのはなぜなのでしょうか。
今申し上げたエンドユーザーと直の取引をする仕事にこだわっていくというのは、人材が成長を支えるビジネスモデルです。そして、そうしたビジネスモデルを支える商材、具体的にはクラウドサービスや独自開発したアプリケーションなどのビジネスも伸びてきています。当社にとっては、優れた人材をしっかり確保することで大きく成長できるタイミングだったと言えます。
ただ、もともと2020年までに上場を済ませたいというのは一つの目標としてありました。東京五輪の開催が決まった時に、少なくともそれまでは日本国内でも好景気が続くであろうことが予測できましたし、市場環境が良好なうちに上場しようと決めたんです。
Oracle DBの絶対的な強みがクラウドでも生きる
――18年6月期の決算では、売上高が99億7000万円で、前年度比で12.5%増です。前年度の決算でも売上高は10%近く成長していますし、営業利益も大きく拡大しています。近年は順調に業績を伸ばしてきたのでしょうか。
いや、一度大きく落ち込んでいます。当社は3期前に1億8000万円くらいの赤字を出しているんです。それまでは2次請け、3次請けの仕事が多かったんですが、会社が成長し、技術力が上がってくることで、ちょうど、お客様から直接請け負う大型案件が増えてきた頃ですね。
――何が原因だったんですか。
後から分析して分かったことですが、設計したり開発したり、テストしたりというのは慣れていますから、ここにミスはなかった。ところが、契約前の見積もり、打ち合わせの段階で、すでに失敗してしまっていたんです。認識のすり合わせが不十分だったと言いますか、そこでお客様の要望をしっかり把握しきれておらず、お客様と当社側の認識がずれていたというか……。いざ開発という段階で、お客様から要望と違うという指摘が出てきて、赤字でもその要望を反映させなければならないなんていうことが、4件くらいのプロジェクトで重なってしまったんです。
――プライムベンダーとして必要なスキルが備わっていないと、そういうことが起こり得るということなんですね。
そう、当社にとってはSIのビジネスモデルを変えていくために必要な経験だったと思います。ただ、この失敗は今回の上場に向けた大きな糧になりました。社内にPMO(Project Management Office)を設置して、見積もり、提案、スケジュール、工数の積み上げなどに妥当性があるかを第三者的視点でチェックするようにしたんです。すると、赤字はどんどん減っていきました。当社は翌期から3期連続で黒字ですが、だいたい40%平均で経常利益が伸びているんですよ。これは赤字が減って、その分が利益に跳ね返ったと理解していただくのが正しいと思います。
――とはいえ、売り上げそのものも成長しているわけです。一番大きな要因は何ですか。
クラウドですね。クラウドは市場そのものが2年で2倍になるようなペースで拡大しています。当社はいち早くクラウドビジネスに着手したというのが大きな成長要因になっています。
――AWS、Azure、Oracle Cloudなど、多くのパブリッククラウドに対応したサービスをラインアップされていますが、特に伸びているサービスは?
クラウドのインフラについては、AWSに特化しようとか、Azureに特化しようということは考えていません。当社の一番の強みは、Oracle Database(DB)です。Oracle DBの最高峰の資格である「ORACLE MASTER Platinum」の取得者数は全国で3位です。例えば基幹システムをクラウドに移すようなケースでも、キモはDBなんです。ビジネスが動いている限りDBは止められない。これを止めずにクラウドに移すというのは大変な技術で、そこを評価していただいています。Oracle DBをAWSに乗せる支援を適切にできると認定されているAWSパートナーは現在国内に3社しかありません。そのうちの1社が当社です。いずれにしても、どのクラウドを使うかというのはお客様の要望によっていろいろと選択肢はありますが、DBを変えようというお客様はいないので、Oracle DBへの対応に強みを持っていることが、クラウドビジネスの成長を強力に後押ししてくれていると言えます。現状、クラウドベンダー側が案件を見つけてお客様を紹介してくれるケースが多いので、インバウンドで仕事がどんどん入ってきているイメージですね。
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